糖尿病は厚生労働省が定める重大疾病の一つである。糖尿病は、LDLコレステロールの血中濃度が高い状態である高LDL血症のリスクを高める。高LDL血症は、動脈硬化形成を促進し、心疾患や脳梗塞の原因となることが報告されており、ヒトを対象とした調査では、糖尿病患者の7割が心疾患と脳梗塞で死亡している。本研究では、糖尿病における高LDL血症発症のメカニズム解明と食品由来成分による高LDL血症改善法を検討する。 申請者の研究において、高グルコース培地で培養細胞を培養すると、MAPキナーゼのリン酸化が上昇し、炎症性サイトカインの発現が上昇することが明らかとなった。炎症性サイトカインは、動脈硬化の発症や悪化に関わることが知られており、高血糖における炎症性サイトカインの発現上昇は、動脈硬化の原因となることが考えられる。さらに、高グルコース培地で培養細胞を培養すると、Rab5の活性が抑制され、エンドサイトーシスによるLDLコレステロールの細胞内への取り込みが低下していることが明らかとなった。これらのことより、高血糖は、エンドサイトーシスを阻害して、血中LDL-Cho濃度を高める可能性が考えられた。血中LDL濃度の上昇は、動脈硬化の原因となるため、高血糖が、エンドサイトーシスを阻害して、糖尿病における動脈硬化症のリスクを高める可能性が考えられる。また、糖尿病における高LDL血症を改善することを目的として、Rab5の活性を上昇させる食品由来因子を探し出すことを検討した。その結果、特許などの可能性があるため詳細は控えるが、Rab5の活性を上昇させる食品由来因子を見い出した。 以上のことより、糖尿病における高LDL血症発症のメカニズム解明と食品成分による改善法の検討について、当初の目的を達成できたものと考える。
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