キシログルカンの分子構造が影響するゲル化特性や低分子物質の包接機能に着目し、グルテンフリーパンの保存による物性変化を改善する新たなキシログルカンの利用法を明らかにすることを目的とした。試料はタマリンド種子由来のキシログルカンを用い、各種酵素と組み合わせた場合の生地物性を比較し、膨化やクラムの硬化抑制に対するキシログルカンと分解酵素の影響を検討した。次に、キシログルカンの部分分解物を調製する酵素反応条件を検討し、製パン試験からグルテンフリーパンに対するキシログルカンおよび部分分解物の影響を明らかにすることとした。 キシログルカンと酵素添加パンを比較した結果、セルラーゼ系のCOSで部分分解したキシログルカンだけでなく、ペクチナーゼ系のPEまたはセルラーゼ系のCA3も製パン性を改善する可能性が示唆された。そこで、COS、PEおよびCA3によるキシログルカン部分分解条件を検討した。酵素はキシログルカンの0.1%とし、40℃で4時間、8時間および16時間インキュベートして部分分解物を調製した。製パン試験と同様の材料配合で調製した生地の粘度特性を測定した結果、いずれも酵素反応時間が長くなるほどみかけの粘度が低下した。しかし、発酵体積増加率は、ペクチナーゼとセルラーゼで傾向が異なることがわかり、セルラーゼ分解物の方が生地物性は安定していることが示唆された。 焼成したパンの比容積およびクラムのテクスチャー改善効果がみられたCOS分解物(XG-E)とCA3酵素添加による製パン性について、パンの糊化度と画像解析および生地粘度特性からキシログルカン部分分解物の影響を検討した。XG-Eを添加すると、グルテンフリーパンの生地に適度な粘度を付与し、発酵および焼成時にガス保持効果が高くなり、均一できめ細かいクラムが比容積の向上に寄与したと考えられた。
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