研究課題/領域番号 |
21K02112
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
村瀬 浩貴 共立女子大学, 家政学部, 教授 (60525509)
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研究分担者 |
古川 貴雄 共立女子大学, 家政学部, 教授 (70262699)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 3Dプリンティング / Additive Manufacturing / 被服 / E-テキスタイル / スマートテキスタイル |
研究実績の概要 |
本研究では3Dプリンティングの技術を応用し,繊維とプラスチックを複合化させた衣服を作製する技術を開発することを目的としている。具体的に着想したアイディアは以下の2つである。①綿糸などの1本の糸を一筆書きのように配列させて平面を充填し、その表面に3Dプリンティングで薄い樹脂パターンを描画して布状体を得る。服の形状を複数のパーツに分割し、上記の布状体からなるパーツとして服を構成する。この時、各ピースは頂点で糸を共有しており、1つの服が1本の糸でできている。②3Dプリンタのノズルに綿糸と熱可塑性ポリウレタン(TPU)糸を供給し、ノズルから吐出した糸を3Dプリンティングの技術で積層して服を造形する。この際に、ノズルの熱で溶融したTPUは接着剤として機能して糸間を接合する。2021年度は、主に①の検討を行った。上記の方法で綿糸とTPUを複合化して作製した布状体による18個のパーツを作製し、一着の服に組み上げた。全てのパーツは綿糸を共有しており、連続した1本の糸を用いて服を構成することが可能であることを実証した。また、実際に着用することはできないが丈30 cmほどの小さな衣服モデルで、パーツに分割することなく1本の糸で一着の服が構成できることも実証した。現在これらの成果を論文投稿する準備中である。また、本技術で作製する布状体の伸縮性を制御する検討も実施した。綿糸を2 cm四方の矩形中に平行に配列させ、その矩形で平面を充填する際に隣接する矩形間では糸の配列が直交するように配置し、さらに表面に格子状の樹脂をプリントすることで経方向にも緯方向にも伸びる布状体が得られることを見出した。この技術を用いれば、布の伸縮性とその異方性を任意に制御することができる。従来の織物や編物とは異なる変形特性を持つため、例えばコンプレッションウエアなどへの応用できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着想した3Dプリンティングの技術を応用して実際に服を作製することに成功しており、概ね予定通りの成果を挙げている。また、本研究で開発した新規な布状体は従来の織物や編物とは異なる伸縮特性を示すことを見出した。この技術はコンプレッションウエアやファンデーションなどへの応用が可能と考えている。応用面も含めて順調に研究が進捗していると判断した。一方、3Dプリンタの改造による本技術の装置化に関しては2021年度は、装置設計の構想を練ることに留まり、装置化の実現には至らなかった。この点はやや進捗の遅れがあるが2022年度に実際に装置化を実行して挽回する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本研究課題で開発した技術をさらに発展させるとともに、3Dプリンタのノズルに綿糸と熱可塑性ポリウレタン(TPU)糸を供給し、ノズルから吐出した糸を3Dプリンティングの技術で積層して服を造形することができる装置の開発を行う。また合わせて本技術を応用した衣服への電子デバイスの実装技術の検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3Dプリンタのノズルに綿糸と熱可塑性ポリウレタン(TPU)糸を供給し、ノズルから吐出した糸を3Dプリンティングの技術で積層して服を造形することができる装置の開発を行う。2021年度は装置化の構想に費やした。また、より充実した装置設計のために2021年度と2022年度の予算を統合して実行する方が効率的な開発が可能と判断したため。
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