研究実績の概要 |
本研究は, 体型プライミングが認知症高齢者の食物摂取量と心理評価に及ぼす影響を実験的に明らかにするものである. 令和3年度は研究期間の初年度として, 研究体制の確立と打合せ, 第一段階として実施した実験のデータ解析と報告, 令和4年度に実施する実験の準備を中心に行った. 研究体制については, 申請時の計画通りの研究連携体制をとることができ, 研究分担者との研究計画に関する打合せや, 研究協力機関と今後の研究実施手順に関する打合せをそれぞれ綿密に行うことができた. 第一実験のデータ解析と報告については, 都内の老人保健施設に入居する認知症高齢者を対象として高BMI画像提示の効果を検討した実験データを解析し, 『日本官能評価学会誌』に優秀発表抄録として成果報告を行った. 今後の研究計画については, 第一実験の成果を踏まえ, 令和4年度に「食堂に飾る額装画の食事・食卓関連性が高齢者の食物摂取量や食事評価に及ぼす影響」を実験的に検討することとした. この準備のために, 実験材料となる額装画の購入, 実験手続きと測定指標の整理を行った. 研究協力機関である老人保健施設からフィールド実験の許可を得ることができ, 令和4年度の実験実施に向けて打合せを継続している. また, 本研究は認知症高齢者の食支援を目標として遂行するものであり, 学術研究を推進することに加え, それら研究成果の社会還元, とくに医療・介護現場への還元も重要であると考えている. そのため, 自治体等が主催する栄養管理講習会等での講演においても本研究成果をわかりやすく紹介する取組みを行った. 令和3年度は千代田区と葛飾区の保健所が主催する講習会にてこれらの講演を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みると, 認知症高齢者の食支援の方略に関しても「感染症対策」を考慮することが不可欠であり, 実験介入の手続きおよび研究のアウトプットの両面において感染症対策に資する研究の可能性を引き続き検討したいと考えている. 本研究はもともと食卓上の視覚的環境調整が介入変数となることから, 研究のアウトプットとしては感染症対策と親和性が高い. 一方で, 実験時の介入においては食膳内に視覚刺激を配置・撤去する作業が必要となり, わずかではあるが感染リスクを高めてしまう懸念もある. そこで, 食卓環境に据え置くことができ, 実験介入プロセスにおいても感染リスクを高めることのない視覚刺激としての額装画に着目し, その効果検証を行うこととした. 令和4年度にはこの実験を遂行し, データ分析を行うことで, 現場に資する成果を得ることができると考えている. また, これらの取組みについて, 論文や学会発表といった学術的な成果発表と, 一般向け書籍・雑誌や講演など医療・介護現場への成果還元の両チャンネルにおいて, 引き続き成果公表につとめたい.
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