本研究では,衣服等の繊維製品に用いられる仮撚加工糸を対象とし,非接触型のオンライン糸形態検査システムを駆使した汎用仮撚加工機で容易に取付け可能なディスクユニットの開発を目的としている.令和3年度ではヒータを用いた従来法の熱間加工とヒータを用いない冷間加工を行い,これまでに開発した糸形態検査を用いた糸形態と糸張力の観点から,両者のサージング(糸の不安定挙動)の発生状況を把握した.その結果,ヒータによる熱応力を除いた「撚りのみ」での冷間加工でもサージングを検証できることが明らかとなった.令和4年度では,冷間加工において材質と形状を変更した各種ディスクユニットおよび加撚長さによる「サージング限界」を把握した.その結果,ディスクユニットのサージング限界は,加撚張力と糸速度に依存していた.また,ウレタンディスクは摩擦力が高いことからサージング限界を向上させていた.なお,加撚長さについては長さの短縮化で糸が加撚しやすくなるが,サージングの抑制効果がわずかであった.これより,サージングにはディスクユニットや加撚長さなど機械構成を検討することで抑制効果があることが明らかとなった. 令和5年度では,上記結果をふまえ,機械構成面から加撚領域のガイド設置に着目し,ガイド有無によるサージング限界の違いを調査した.加えて,糸とガイド間に生じる摩擦が加工中の撚り抵抗となるため,糸繊度の観点からも同抵抗とサージング限界の相互関係を検証した.その結果,(1)加撚領域でのガイド設置は,加工中の糸振動を抑制しサージング限界を向上させる.(2)ガイド個数が増加するとサージング限界が向上するが,糸とガイド間に発生する摩擦力による撚り抵抗で糸が加撚しにくくなった.(3)糸繊度は剛性に影響し,糸繊度が大きいとディスクへの押しつけ力および加撚張力が増加するが撚り抵抗への影響はほとんど見られないことが明らかとなった.
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