研究課題/領域番号 |
21K02125
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
吉村 由利香 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (00416314)
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研究分担者 |
大江 猛 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (10416315)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 照明による色ズレ / 色材の分光反射率 / 白色LED光源スペクトル / 三刺激 |
研究実績の概要 |
近年、家庭や企業、公共の場所などでLED照明が広く使用されている。LED照明は省エネルギー性に優れるなど利点が多いため、今後さらに利用が拡大し重要になると考えられる。 しかし、現在、市場に流通している多くの白色LED照明では、その照明下の物体色の見え方が従来の照明と異なることが問題になっている。そこで、本研究は、LED照明下の製品色の色ズレの問題を解決するため、物体を着色する色材の分光反射率曲線に着目し、これを工夫することで、LED光源の分光分布の影響を受けにくく、色ズレを起こしにくい色材を開発する。本研究の結果は、照明による工業製品の色ズレを解決する色材の開発につながる。LED照明下で色ズレが起きにくい基本原色を揃えることができれば、調色によって様々な製品色に対応できる。本技術は、染料、顔料、インク、塗料など各種色材で利用可能なため、幅広い業界で役立つことが期待される。また、本研究で開発する色材は、既存色材の調合で作成するため、新規色材を化学合成する必要がなく、手軽に実用化することができる。本研究は、対象とする光源をLED光源から他の光源に変えることで、他の照明の色ズレについても研究を展開することが可能である。 LED光源と太陽光源について、視細胞から脳に送られる3種類の電気的な色彩刺激に着目し、これを算出するプログラムを作成して、光源のエネルギー分布の差と色彩刺激の関係性を調べた。その結果、色彩刺激は特定の波長にピークを生じることが分かった。このピーク波長は、色材の色味や反射率曲線の波形に関わらず、常に一定であり、このピークと色ズレには相関性があった。このピーク波長を考慮して色材の反射率曲線を設計することにより、LED照明下の色ズレが改善できると考えられることから、モデル色材の反射率曲線をデジタル的に作成し、シミュレーションによって色ズレの減少を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画は、基礎研究として、青色染料をモデル色材として、色ズレ抑制効果を持つ色材の分光反射率曲線を計算するためのプログラムを作成するため、以下の研究を行った。 ①LED光源と太陽光源について、各波長のエネルギー差を算出するプログラムを作成した。 これによって、LED照明光と太陽光のエネルギー分布の差と色ズレの関係性を調べたが、両者に直接的な関係性は認められなかった。そこで、視細胞から脳に送られる3種類の電気的な色彩刺激(X刺激、Y刺激、Z刺激)に着目し、これを算出するプログラムを作成して、光源のエネルギー分布の差と色彩刺激の関係性を調べた。その結果、色彩刺激は特定の波長(450,470,500,550nm)にピークを生じることが分かった。このピーク波長は、色材の色味や反射率曲線の波形に関わらず、常に一定であり、太陽光とLED光の分光分布の違いに起因するピークであると推測された。このピークと色ズレには相関性があった。 ②このピーク波長を考慮して色材の反射率曲線を設計することにより、LED照明下の色ズレが改善できると考えられることから、モデル色材の反射率曲線をデジタル的に作成し、シミュレーションによって色ズレの減少を確認した。 ③実際に、染料をカラーマッチングシステムで調合し、②の効果を確認する予定であったが、新型コロナウイルスやウクライナ問題などの影響による半導体不足と機器の価格高騰で予定していたカラーマッチングシステムの購入が出来ず、研究が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の計画は、基礎研究として、色ズレ抑制効果を持つ青色色材の分光反射率曲線を作成し、色材の分光反射率曲線が色ズレに及ぼす影響とその抑制効果を調べる計画であったが、2021年度の研究の遅れのため、以下の様に予定を変更して研究を行う。 ①予定していた染料調合用カラーマッチングシステムの購入が難しいことから、分光光度計用のオプションソフトウエアのカラーマッチングプログラムを購入して代用する。マッチングの精度や調色機能が不十分なため、これを補完するための実験計画を新たに考える。 ②調色用データとして、カラーマッチングプログラムで利用できる複数の既存染料・インクの分光反射率を測定し、データベースを作る。 ③前年度の結果から、LED照明下の色ズレが少ない色材の分光反射率曲線をデジタル上で設計し、目的色データをつくる。 ④カラーマッチングプログラムを用いて、複数の既存染料・インクの調色用データベースから、目的色を調合する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、染料を調合するためのカラーマッチングシステムを購入する予定であったが、半導体不足によって、納期の遅れと機器の価格高騰が生じ、予定していたカラーマッチングシステムが購入できなかった。 代替の機器として、既存の分光光度計のカラーマッチング用オプションプログラムを購入したが、精度や機能が不十分であるため、今後、補助装置の購入、研究計画の変更で対応する。
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