研究課題/領域番号 |
21K02126
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
重川 純子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80302503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 所得変動 / 長期家計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世帯の所得変動のタイプの分布を明らかにし、今後の生活設計教育の資料とするほか、所得保障政策の課題を検討することである。今年度は、先行研究として同一個人の家計を補足できる長期記帳家計簿の分析資料をもとに所得変動の実態を分析した。1980年代までに長期にわたり記帳された家計簿22世帯の集計結果をもとにそれぞれの等価所得(実収入)を実質化し所得変動の分析を行った。記帳期間は概ね20年以上であり、4分の1は50年を超え、ライフサイクル上では、結婚前の単身期を含むものもあるが、結婚し家族形成後の生活変動である。 明治、大正期においても、小刻みな増減変動をしつつも趨勢としては年齢上昇に伴い所得は上昇している。子の人数が多く世帯人員が6人以上になる期間を含む場合にも、世帯所得だけでなく、世帯人数を調整した値である等価所得も必ずしも低下していない。昭和戦前期には等価所得が低下している。所得水準や世帯主年齢階層によらず低下しており、昭和恐慌などの経済環境の影響は様々な層に及んでいたことが推察される。戦後は、物価高騰の影響もあり戦前期に比べ大きく所得が低下したが、その後は、各世帯の世帯主年齢60歳前後までは高度経済成長期以降も上昇傾向にあることが多かった。60歳を超えた高齢期にも所得が上昇傾向にあるのは、子世代との同居、再就職といった家族形態、就業形態が影響している。本研究では10年間の所得変動タイプを捕捉する予定であるが、趨勢を数十年の期間でみると上昇している場合でも、切り取る10年間によっては上下動タイプや一時的な急変を含む変化なしタイプなどで捕捉される場合もみられることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究の調査の他、使用するパネルデータの変数の確認、分析を行う予定にしていた。所得変動タイプについて参照したイギリスの先行研究を追加調査したところ世帯所得の他、時間あたりの所得の変動を捉えており、本研究での実施を検討したが、通年の状況として世帯所得のみの変動とすることとした。分析予定であるパネル調査の2つのコーホートのうち1つについて所得変動の検討が行えておらず、やや進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
イギリスパネル調査の所得変動のタイプ分けを参照しつつ、パネル調査データを用い、就職氷河期前世代と就職氷河期世代の2つのコーホートの等価世帯所得の変動状況を捕捉する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗がやや遅れていること、またコロナの影響もあり研究補助のアルバイトの依頼が十分に行えなかったため、残額が生じた。次年度は研究補助を依頼予定である。
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