研究課題/領域番号 |
21K02127
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
仲西 正 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (90198143)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オムツ / 高分子ゲル / 膨潤 / 糖類 |
研究実績の概要 |
オムツ素材のモデルとして,人体への安全性や廃棄後の環境保全などの観点から,毒性のない水溶性高分子であるポリビニルアルコール(PVA)を選択した.架橋剤としてグルタルアルデヒドを用い,ガラスキャピラリー中でPVA水溶液をゲル化させ直径0.2 mm程度の円柱状ゲルを得た. 調製条件の異なる複数の高分子ゲルサンプルについて,尿モデルとして設定した水溶液中で膨潤度を測定した.測定に用いる溶質としては,尿中成分を念頭におくとともに基礎的な知見を得ることも考慮し,構造が異なるいくつかの糖および糖アルコールとした.具体的には,グルコース,ソルビトール,myo-イノシトール,マンニトール,meso-エリトリトールとした.高分子ゲルの膨潤度は,溶液に浸したまま顕微鏡で円柱状ゲルの直径を測定することにより行った.溶質濃度の増加に伴って膨潤度の極大が見られた.myo-イノシトールを除くと,グルコースと4種類の糖アルコールでは約0.5 M付近で極大を示した. 膨潤度の極大を示す溶質濃度が,それぞれの溶質の溶解度が大きく異なるにも関わらず同様であることから,水中では,分子内あるいは水との相互作用が異なる糖類似物質でも,ゲル中での水素結合の作用は同様となるのではないかと推定される.これらの溶質は,PVAゲルの物理架橋として寄与しているOH基間水素結合を切断することで,ゲルのOH基が水和してゲルが膨潤するのではないかと考えられる.一方,myo-イノシトールでは,0.06 M程度と非常に低濃度で膨潤度に極大が見られた.非常に興味深い現象である.PVAゲルのOH基と強い相互作用を持つためと思われるが,現段階ではその理由は明らかではない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリビニルアルコールゲルの調製においては,最適調製条件の探索に時間を取ったが,無事調製を行うことができた.糖および糖アルコール水溶液中での膨潤度測定では,想定をしていなかった膨潤度の極大が観察され,それが溶質の種類によっては,非常に低濃度で見られるという興味深い現象を明らかにした.現段階では考察は十分でないが,実験的に検討すべき方向性を示すことができたと考えられ,初年度としては順調と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に観察された,膨潤度の極大が発現する機構を明らかにするには,鹸化度が異なるPVAゲルについての膨潤度測定,今回用いなかった糖および糖アルコール中での膨潤度測定,およびゲル中の水の状態を調べるための示差走査熱量測定などが必要となると考えられる.2年目は,鹸化度が異なるPVAゲルの調製とその膨潤度測定から研究を進めることとしたい.
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