研究課題/領域番号 |
21K02129
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
藤平 眞紀子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (90346304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 住まいの管理の変遷 / 居住者の管理意識 / 婦人雑誌 / 持続可能な管理 |
研究実績の概要 |
わが国における居住者を主体とする住まいの管理の変遷を明らかにし、現代社会において求められるその意義を再定義し、これからの持続可能な住まいの管理について考察して、社会的なシステムを提案することを本研究の目的としている。令和4年度は以下の検討を行った。 現在の住まいの管理、今後の住居管理への影響が大きいと考えられる第二次世界大戦後から2021年までを検討対象期間とした。戦後、住居管理に対する居住者の意識および実践に視点をあて、人々の考え方、社会の様子、時代の流行が表れやすく、生活に影響を与えると考えられる婦人雑誌掲載記事に着目した。婦人雑誌『婦人之友』905冊と『暮しの手帖』第2世紀100冊を対象として、住まいや住生活、家事に関する記事、住まいの管理に関する内容や当時の取り組みなどを把握し、居住者主体の住まいの管理の変遷を検討した。 『婦人之友』では、自分たちの暮らしをより良くするよう、「家庭生活」「設計・計画・材料」「社会生活」に関する記事が幅広くコンスタントに掲載されていた。掃除について、名称や内容、掃除道具、掃除場所に変化がみられ、生活様式の変化とともに、生活者は自分らしいやり方で家庭清掃を実施していくよう導かれていたことが明らかとなった。 商品テストに特徴をもつ『暮しの手帖』では、1969年に「掃除機をテストする」が掲載され、新しい掃除道具である電気掃除機に対する生活者の思いが、メーカーに向けられていた。また、70年代初めにかけて衛生・清潔、70年代前半は掃除・清掃、70年代後半以降は補修・修繕に関する記事が多く、住居管理の目的が変化していたと考えられた。 『婦人之友』の検討結果を家政学会(2022年5月)および建築学会(2022年9月)で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的には、1946年から2021年に発刊された婦人雑誌『婦人之友』905冊を閲覧し、住まい、住宅、住生活、住居管理、住環境、家計や家事に関する記事の分析から、その内容や当時の取り組みなどを把握した。対象記事1793件について、生活・暮らし方、住居管理、住環境・設備など「家庭生活」に関する内容が約8割を占めていた。住生活だけでなく生活全般の中に住生活、住まいのことが記載されていた。生活様式の変化とともに、生活者は自分らしいやり方で家庭清掃、住まいの管理を実施していくよう導かれていたことが明らかとなった。また、住宅計画、設計・デザイン、材料・施工など「設計・計画・材料」に関して、建築的な要素が含まれるものの、住宅の設計に関連した記事が多かった。研究の成果を日本家政学会誌に論文投稿し、最終査読段階である。 また、商品テストに特徴をもつ『暮しの手帖』において、1969年に「掃除機をテストする」、その後1974、76、77、80、84年に掃除機の商品テストの記事が掲載されていた。新しい掃除道具である電気掃除機に対する生活者の思いが、メーカーに向けられていた。また、70年代初めにかけて衛生・清潔、70年代前半は掃除・清掃、70年代後半以降は補修・修繕に関する記事が多く、住居管理の目的が変化していたと考えられる。さらに、この時期は家具や棚の製作に関する記事が多く、生活者自身で住環境を整え、維持管理していくための情報が提供されていた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、『暮しの手帖』の検討期間を広げ、創刊から2022年までを対象とする。その中で『婦人之友』の検討と同様に、第二次世界大戦後から現在に至る約75年間における住まいや住生活、家計や家事に関する記事の分析から、住まいの管理に関する内容や当時の取り組みなどを把握し、住まいの管理の変遷をまとめる。また、住生活関連書籍、民俗関連の書籍や研究報告、郷土史なども参照し、住まいの管理に関する内容を抽出する。また、住まいに関する教育について、家庭科教育から検討した結果を基礎として、住まいの管理に関わる教科書の記述内容およびその変遷を明らかにして、検討を深める。 また、住まいの手入れの道具および住宅の材料等の変化と住まいの管理の関係を読み解く。住まいの手入れの道具や方法について、掃除道具をはじめとする住まいの手入れに関わる道具の変化や家電製品の普及の実態とともに、生活労働の変化、家事労働や清掃時間の変化にも着目して検討を進める。材料に加えて、設備や間取りの変化、住宅の商品化についても対象とする。これらは、材料メーカーや設備メーカーへのヒアリングおよび関連企業の報告書や社史などの文献調査より検討する。 得られた結果を取りまとめ、学会等で成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
入力作業を依頼できる学生が予定したほど見つからなかったため、また、コロナの影響で企業等へのヒアリングを控えたため。また、研究成果をまとめて投稿した論文の査読に時間がかかり、今年度内に掲載が決定せず、投稿料が発生しなかったため。 次年度は、論文投稿料、収集した資料の整理のための人件費として、また、企業等へのヒアリングおよび情報収集のため、学会等での研究成果発表の出張旅費に使用する予定である。
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