研究課題/領域番号 |
21K02130
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
高橋 哲也 島根大学, 学術研究院人間科学系, 教授 (90325035)
|
研究分担者 |
鶴永 陽子 島根大学, 学術研究院人間科学系, 教授 (60517051)
麻生 祐司 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 教授 (70380590)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 多孔質 / 細孔 / レーヨン繊維 / 臭気 / 吸着 |
研究実績の概要 |
2021年度は、主に以下の2つの項目についての研究を行った。 1)多孔質な表面を持つレーヨン繊維の作製 臭気物質の吸着性をより高めるため、繊維表面の細孔の孔径を大きくした多孔質化したレーヨン繊維の作製に関する検討を行った。繊維内部に独立した空孔を形成させるべく、原料ビスコースに対して気泡形成剤である炭酸マグネシウムや飽和脂肪酸であるステアリン酸リチウムを添加し、撹拌機を用いて分散度合いを変化させた。得られた原料を用い、引き取り速度を変化させながら湿式紡糸を行った。その結果、繊維表面の細孔の孔径を30~50Å程度にまでは高めることができた。但し、湿式紡糸時に糸切れが多発し、安定した紡糸は困難であった。さらに、繊維内部の気泡を大きくする条件では、湿式紡糸は不可能であった。現在、気泡発生剤の量や種類、紡糸条件などを変化させ、さらに検討を継続している 2)多孔質レーヨン繊維への臭気吸着性の評価 本研究で開発する繊維は、様々な臭気に対する吸着/分解を目的としている。そこで、ターゲットとなる臭気物質として、アルカリ性臭気にはアンモニア、酸性臭気には酢酸、中性臭気にはアセトアルデヒドを消臭実験に用いて検討を行った。その際、本申請設備で購入させていただいた熱線型焼結半導体式の臭いセンサーを使用し、臭気濃度の評価を行っている。その結果、それらのいずれの臭気に対しても、吸着/分解に対する高い効果が確認できた。これらの結果より、本研究で得られる多孔質な繊維表面を持つレーヨン繊維は、介護空間の臭いを有効に吸着/分解し得る可能性を示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
湿式紡糸時に繊維内部に独立した気泡を持つ繊維の作製が非常に困難であり、その対応には時間を要した。原料ビスコースと気泡形成剤の分散状態をコントロールするにも、様々な要因が存在することが明らかとなった。これらのことは、本研究における最も大きなポイントとなる課題であると考えている。 また、繊維表面の状態を調べるのにガス吸着DFT法を用いているが、学内には保有していないために学外の装置を借りて実験を実施している。そのため、繊維の表面状態の評価にも時間がかかる状況にはある。今後、測定装置の定期的な借用計画を立てて実施する予定にしている。 なお、現時点ではある程度のその解決の方向性も見えてきている。引き続き、原料の種類やその添加量、撹拌条件など、様々な角度より検討を実施することとする。
|
今後の研究の推進方策 |
様々な臭気物質を組み合わせた複合臭気を用い、繊維に対する吸着性の検討を行う。人間の感じる臭気は、低強度であっても毎日嗅ぎ続けると、不快や苦痛となる。そこで、官能評価において、嗅覚閾値濃度以下になることを基準として実験を進めることとする。昨年度に引き続き、まず繊維表面の細孔の孔径を高めるべく検討を継続する。 その後、繊維表面の細孔内部での光触媒酸化チタンの結晶化の検討を行う。つまり、得られた繊維表面の状態の異なる多孔質繊維に対して、ペルオキソチタン酸溶液やペルオキソ改質アナターゼゾルなどの光触媒物質の前駆体溶液に含浸させる検討を実施する。その際、高出力で連続な超音波を発生させ得る連続超音波発生器を用いることとする。多孔質繊維への含浸に最適な周波数や温度や時間等を変化させて、その影響についての検討を行う。さらに含浸後のサンプルに対して熱処理を実施し、アナターゼ結晶の生成に最適な熱処理条件について調べることとする。
|