研究課題/領域番号 |
21K02136
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
大石 恭子 和洋女子大学, 家政学部, 教授 (40372908)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 玄米 / 吸水 / 炊飯 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
加熱途中でさし水添加を行う「びっくり炊き」が玄米の調理特性に及ぼす影響を検討した。今年度は総加水量、浸漬の有無、さし水温度の検討を行った。 加水量の検討は、浸漬時の加水量を米重量の1.2倍とし、炊飯途中で加えるさし水割合を、米重量の0.5倍、0.8倍、1.1倍(総加水量は各々1.7倍、2.0倍、2.3倍)に変化させて実験を行った。その結果、最も総加水量の多い2.3倍加水の飯試料は、一粒重および長径が有意に大きく、軟らかさや粘りも有意に増大した。 浸漬の有無における検討では、さし水を添加しない「普通炊飯」をびっくり炊きに対する対照条件として設け、玄米炊飯におけるさし水添加と浸漬との関係性を調べた。さし水をしない普通炊飯の場合、浸漬を行わない玄米飯は、浸漬を行った試料と比べて水分含有率が低く、硬さが有意に大きかった。一方で、びっくり炊きの場合、浸漬の有無は玄米飯の水分含有率および硬さに影響を与えなかった。したがって、びっくり炊きでは、さし水添加による吸水促進効果が加熱前浸漬による吸水効果を上回ることが示され、びっくり炊きは、従来玄米炊飯において必要とされている「長時間浸漬」を省略できる可能性が示唆された。 さし水温度が与える影響については、0℃、20℃、98℃の3条件で検討を行った。最も温度の低い0℃条件では、さし水添加に伴う炊飯液の温度が低くなるため、再沸騰直後の外皮破裂が有意に著しく生じ、吸水およびデンプンの溶出が促進された。0℃条件は他条件と比較して、飯の硬さが有意に低く、粘りは大きく、糊化度も高い傾向が見られた。さらに0℃条件の飯粒の長径は他条件と比べて有意に大きく、炊き増えが確認された。 以上より、びっくり炊きは長時間の浸漬を省略することが可能で、さし水温度は低い方が炊飯途中で外皮が破裂し、物性改善も見られ、糊化度も高い傾向が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は炊飯における加水量、浸漬の有無、さし水添加のタイミング、さし水の量、さし水の温度等の条件を設計し、これらに対して炊飯時の温度履歴、米粒の果種皮の破裂状態の数値化、飯の形状、色、物性の測定を行う予定であった。おおむね順調にすすんでいるが、さし水の量の検討ならびにさし水のタイミングは2022年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
これまで電気炊飯器を用いてきたが、加水量や火力に限界があることが分かった。そこで今年度は鍋を用いてびっくり炊きを行い、さし水の量やタイミングの検討を行う。総加水量を昨年度よりもさらに増やし、1回のさし水の量やさし水の回数なども変えて果種皮の破裂率、胚乳の露出割合、物性の測定を行い、何が玄米飯の物性に関与するのかを検討する。また、炊飯液に溶出する固形物量の測定を行い、物性との関連性について検討する。炊飯後の飯の糊化状態については、圧縮米飯粒法およびBAP 法を用いて定量測定し、呈味成分として遊離糖,遊離アミノ酸量の測定を行う。消化性についてはデンプン消化性分析キットを用い,白飯や他の炊飯方法で調製した玄米飯の測定値と比較する予定である。 2023年度は、今年度、研究で確立した炊飯方法を用い,玄米品種に因る違いを検討する。玄米として,異なる品種のジャポニカ米うるち種,巨大胚芽種,低アミロース種などを用いる予定である。また調理済み食品としての玄米飯を想定し,5℃で0~24時間保存した際の品質評価を行う。飯の物性測定は経時的に行い、冷蔵した飯からデンプンを抽出し、示差走査熱量測定、BAP法を用いてデンプンの老化について測定する。また飯の状態で圧縮米飯粒法を用いて色彩測定、画像解析を行い、白米での老化の指標値が玄米飯でも利用できるか検討する。味付け飯モデルとして炊飯液に食塩、醤油、食酢、砂糖、酒を添加した玄米飯を調製し、炊飯後および冷蔵後に物性測定を行い、嗜好評価と関連付ける。 研究成果に基づいた玄米飯の最適な炊飯条件を提案し、一般市民や食品業界での玄米飯の普及拡大に資する情報の提供を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加がオンラインとなり、旅費の出費がなかった。またアミノ酸分析機は機器が古すぎて修理が不可能であったため修理費が不要であった。
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