研究課題/領域番号 |
21K02136
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
大石 恭子 和洋女子大学, 家政学部, 教授 (40372908)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 玄米 / びっくり炊き / 炊飯 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
加熱途中でさし水添加を行う「びっくり炊き」が玄米の調理特性に及ぼす影響を検討した。今年度はIHを用いた鍋炊きでびっくり炊きを行い,常法で得た玄米飯(普通炊き),T社,S社の炊飯器の玄米モードで得た玄米飯と比較することにより,びっくり炊きの基礎的な炊飯データを取得することを目的とした。 びっくり炊きは以下のように行った:150 gの玄米を洗米後,ホーロー鍋に入れて,180gの水を加えて点火後,約10分で沸騰,その後10分後に炊飯液が無くなり,2℃の冷水225 gを入れ,炊飯液が再び沸騰したら,そこから20分間加熱して消火し,蒸らしを行った。普通炊きは,玄米150 gを洗米後,びっくり炊きと同じ加水比2.7になるように水を加え,点火後,約10分間で沸騰,その後20分間沸騰を継続し,消火,蒸らしを行った。 びっくり炊きは普通炊きならびにT社炊飯器に比べて飯の水分含有率が高く,P社炊飯器の飯と同程度であった。また,びっくり炊きは普通炊きよりも長軸が有意に長く,P社炊飯器飯はさらに長く,T社炊飯器飯および普通炊きは有意に短い結果となった。胚乳露出面積率はびっくり炊きが最も大きく,2社炊飯器飯は小さかった。飯粒全体の硬さは,普通炊きが最も硬く,P社炊飯器が最も軟らかい結果となった。 以上より,びっくり炊きは普通炊きに比べると,飯の水分含有率が高く,飯粒が膨らみ,外皮が破裂し,軟らかい仕上がりになることが示された。市販の炊飯器の飯はびっくり炊きに比べるとT社は飯粒の水分,膨潤が低く,P社は逆によく膨らみ,物性はびっくり炊きと同程度の仕上がりであった。びっくり炊きは浸漬も不要で55分で炊くことができる一方,市販の炊飯器は80分以上の炊飯時間を要する。飯の仕上がりとしては,びっくり炊きは炊飯器と同程度またはそれよりも良く,玄米の炊飯方法として本方法の有用性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
玄米飯の官能評価が予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は炊飯過程での吸水挙動が玄米飯の糊化,呈味,消化性に与える影響を調べる。 吸水の定量は,差し水後の米粒の重量変化を経時測定し,炊飯液に溶出する固形物量の測定を行い,吸水量の計算値の補正を行う。吸水の挙動はMRI(磁気共鳴画像法)を用いて視覚的に把握する。玄米1粒を試料管に入れ,核磁気共鳴装置を用い,三次元グラジエントエコー法により差し水添加後の米粒の測定を行う。 炊飯後の飯の糊化については,BAP法(外部委託)を用いて定量測定する。消化性についてはメガザイム社のデンプン消化性分析キットを用い,白飯や他の炊飯方法で調製した玄米飯の測定値と比較する。 びっくり炊きの玄米飯の官能評価を行い,これまでの結果と照らし合わせて,よりおいしい玄米飯の炊き方を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
テクスチャーアナライザーの備品は,既存のもので賄えた。今年は外部委託する糊化度測定の費用に充てる。
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