玄米の炊飯途中で,炊飯液を一度枯渇させてさし水を添加する「びっくり炊き」は江戸時代から伝承されてきた玄米の炊飯方法である。さし水添加が米の吸水を促すため,炊飯前の浸漬を省略し,さらに白飯と同程度の時間で炊飯を終えることができる。本研究では,さし水の回数,量,タイミングの違いがびっくり炊きの飯の特性ならびに炊飯過程での米の変化に与える影響について検証した。 ホーロー鍋に玄米と加水比1.2の水を入れて加熱を開始し,10分後に沸騰,沸騰継続10分後に炊飯液を枯渇させ,そこに加水比1.5の2℃のさし水を加えて沸騰継続20分後に消火,10分間の蒸らしを行った飯を対照試料とした。総加水比は一定とし,さし水を添加するタイミングを2回に分けると,さし水をするたびに米の吸水,膨化,デンプンの糊化が促されるが,白飯と同程度の加熱時間で炊飯を終了させるにはさし水は1回で十分であることが明らかとなった。さし水の最適なタイミングは糊化度が60%程度に達した時点であり,吸水を促す効果が最も大きく,これよりも早くても遅くてもさし水添加の効果が劣ることも示された。 玄米飯の各測定項目の相関関係より,炊き上がり倍率,飯の水分,胚乳露出面積率,BI(Browning Index)値,飯の硬さには,それぞれ著しく高い相関が見られた。これまで玄米飯の外皮の破裂具合を示す「胚乳露出面積率」が玄米の吸水や膨潤の指標になり得るとしてきたが,本研究より,飯粒の色彩測定で得られるBI 値の方が測定が簡便であり,かつ米粒の吸水や飯のテクスチャーを胚乳露出面積率と同じように捉えることができることを明らかにした。低吸水性が課題となる玄米炊飯において,この指標は有効であると考える。
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