研究課題/領域番号 |
21K02137
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大畑 素子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (60453510)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 加熱香気 / 嗅覚刺激 / 中枢の摂食調節 / メイラード反応 / ヒドロキシフラノン |
研究実績の概要 |
加熱調理中に起こるメイラード反応により生成される香気成分ヒドロキシフラノン類は食品の嗜好性に貢献するだけではなく、香気を嗅ぐことによって様々な生理作用をもたらすことが近年明らかになっている。先行研究では、ある種のヒドロキシフラノンをラットに吸入させることで摂食量が有意に増加するが、体重は変化しないという興味深い結果が示された。この結果に基づき、本年度はマウスを用いて1種類のヒドロキシフラノンによって嗅覚刺激し、摂食量、体重、自発的運動量を測定した。本年度用いた1種類のヒドロキシフラノンのマウスへの曝露濃度を決定するために、種々の濃度のヒドロキシフラノンのヘッドスペース部から、HS-SPMEにより捕集しGC-MS分析した。その結果、10000ppmサンプルでシャープなGCピークを得ることができた。次に10000ppmサンプル1mlを含むコットンを空のマウスケージ上部に設置し、直下3cmにファイバーが露出されるようHS-SPMEホルダを設置し、経時的に1種類のヒドロキシフラノン量を測定した。その結果、設置開始4時間でピークを示したことから、本研究におけるマウスへの曝露時間を4時間と決定した。実験動物は8週齢のC57BL/6のオスマウスを用い、ヒドロキシフラノン(F)曝露群とコントロール(蒸留水の匂いを曝露、C)群の2群設定した。ヒドロキシフラノンあるいはコントロールの曝露頻度は週3回、4時間とした。6週間毎日体重、摂食量を測定し、ANIMEX(室町機械)を用いて週1回自発的運動量を測定した。摂食量および試験開始からの体重変化については両群で有意差は確認されなかった。自発的運動量は、オープンフィールドにおける行動観察開始直後の15分間において、大きな動きをカウントするセンサーで4週目および6週目でF群が有意に高い行動量を示した。4から6週にかけて行動量が上がる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属学部における動物実験計画書に基づく実験動物倫理審査に一定の時間を要し、承認を得てからの実験開始となったため、当初計画していた「視床下部外側核における神経細胞の活性化の測定・評価」が年度内に実験が終わらなかったが、令和4年度初めに実施し、現在進行中である。また、実験動物への香気成分の曝露濃度・曝露時間などの条件を詳細に再設定する必要があったことから、当初の研究計画に追加して化学的な香気成分分析を実施した。このように多少計画を変更したが、この化学分析は動物実験を安全に遂行するためには必須である。さらに、自発的運動量の評価の再評価が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在実施中である摂食調節ペプチドおよび受容体発現の検証では、主に摂食促進に関連するペプチドとエネルギー代謝に関わるレセプターについて検討している。今後は、他の摂食促進関連ペプチドや摂食抑制ペプチドおよび受容体の発現をスクリーニング検証する。また、脳を採材し組織切片を切り出した後、免疫染色し神経細胞の活性化について評価するが、今後、視床下部外側核だけでなく、嗅球や扁桃体などについても評価する。 構造的活性相関を明らかにするため、ヒドロキシフラノン類縁体についても摂食量、体重変化、自発的運動量など表現型における影響を検討し、中枢における遺伝子発現への影響も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施したマウスの自発的運動量測定は、当研究室に古くからあるANIMEX(室町機械)を用いて予備的に検討実験を行ったものである。したがって、本年度運動量測定装置購入のために計上していた金額を年度内に使用しなかった。本年度の予備的な検討実験でマウスのおよその行動傾向と再評価の必要性が判明したので、次年度高精度な自発的運動量測定システム(測定器付きケージとその解析ソフトウエア一式)を購入し、実験に導入する予定である。
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