研究課題/領域番号 |
21K02140
|
研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
渡邊 慎一 大同大学, 工学部, 教授 (00340175)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 日傘 / 雨傘 / 生地色 / WBGT / UTCI |
研究実績の概要 |
令和4年度は、雨傘および日傘下で実測した熱環境要素に基づき、暑さ指数WBGTおよび体感温度UTCIを算出し、それぞれの暑熱緩和効果を定量的に明らかにした。日傘(白・黒)および雨傘(白・黒)の下、および日向において、気温・相対湿度・風速・上向き下向き長短波放射量、WBGTを測定した。実験に用いた日傘および雨傘の親骨の長さは全て50cmとした。傘生地は日傘および雨傘ともにポリエステルであり、織り密度も同一である。全ての傘の表面には撥水加工が施されている。また、日傘の裏面にはポリウレタンコーティング、および雨傘の裏面にはアクリルコーティングが施されている。これらの傘の制作は傘メーカーに依頼し、市販されている一般的な日傘および雨傘と同等の仕様とした。また、全ての測定項目の測定高さは、測定対象の各傘の下端と同じ高さである地上1.5mとした。 実測した上向き下向き長短波放射量から算出した平均放射温度MRTおよび熱環境要素(気温・相対湿度・風速)を用いて体感温度UTCIを算出した。また、暑さ指数WBGTは、WBGT計を用いて測定した。 その結果、UTCI低減効果が最も大きいのは日傘(白)で-3.7℃であり、次いで、日傘(黒)が-2.2℃、雨傘(黒)が-2.1℃であった。雨傘(白)は0℃であり、UTCI低減効果は認められなかった。また、WBGT低減効果が最も大きいのは日傘(白)で-1.3℃であり、次いで、雨傘(黒)が-1.2℃、日傘(黒)が-1.0℃であった。雨傘(白)は+0.2℃であり、日向よりもWBGTが高くなり低減効果は認められなかった。日傘(白)の暑熱緩和効果が最も大きいことは先行研究を支持するものである。一方、雨傘(白)の暑熱緩和効果が認められないことは本研究で初めて明らかになった重要な知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画において、令和4年度は雨傘および日傘の暑熱緩和効果を定量的に明らかにすることを掲げた。計画通り、日傘(白・黒)および雨傘(白・黒)の4種の傘下において実測した熱環境要素に基づいて体感温度UTCIおよび暑さ指数WBGTを算出した。そして、日向において算出したUTCIおよびWBGTを基準として、各傘の暑熱緩和効果を定量的に明らかにした。その結果、日傘(白)の暑熱緩和効果が最も大きく、日傘(黒)および雨傘(黒)は同程度の暑熱緩和効果があり、雨傘(白)の効果は認められないことが明らかになった。このように、現在まで研究は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、令和5年度に子供使用時を想定した日傘および雨傘を用いた測定を実施する予定であった。しかし、今年度の研究により、黒の雨傘の暑熱緩和効果は黒の日傘と同程度であり、また白の雨傘は暑熱緩和効果が認められないことが明らかになった。そこで、子供使用時の実測は日傘のみを対象として実施することが妥当であると判断し、計画を前倒しして、試行的に子供および大人の日傘使用を想定した熱環境の測定を実施した。 子供の日傘使用では傘下端が地上1.2mになるように日傘を取り付け、測定高さは地上0.1m、0.6m、1.1mとした。大人の日傘使用では傘下端を地上1.7mになるように日傘を取り付け、測定高さは地上0.1m、0.6m、1.1m、1.6mとした。比較のため、日向においても同様の測定を実施した。 ここで課題となったのは、各測定点における風速の測定である。今回の測定で採用した風速計は同時に多点で測定できる特徴を有しているが、各測定点に設置する風速センサを全て直列に接続し、1台のPCでデータを収集する必要があった。さらに、通信品質を担保するためセンサ間のケーブル長さは最大で2mであり、日傘と日傘の間の距離を十分に取ることが困難であった。この課題を解決するためには、風速を含む熱環境要素の各センサで測定したデータをワイヤレスで収集し、センサ間のケーブルに制約されない測定システムを開発する必要がある。そこで、センシングおよび通信技術の専門家の協力を仰ぐこととした。
|