研究課題/領域番号 |
21K02162
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
安田 みどり 西九州大学, 健康栄養学部, 教授 (20279368)
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研究分担者 |
田端 正明 佐賀大学, 理工学部, 客員研究員 (40039285)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 緑茶 / にごり / クロロフィル / カテキン / 光退色 |
研究実績の概要 |
淹れたての緑茶は鮮やかな緑色を呈しているが、光によるクロロフィルの分解により退色してしまう。我々は、これまでに、水-アルコール系や乳化剤を添加した水系において、クロロフィルが100 nm以下の小さな自己凝集体を形成し、光退色を抑制することを明らかにした。一方、最近注目されている“にごり緑茶”でも同様にクロロフィルの自己凝集体の形成が予想される。本研究では、にごり緑茶中の凝集体形成をミクロ的およびマクロ的に評価し、光退色・変色への影響を調べることを目的とした。また、光退色・変色の影響を受けないにごり緑茶の自己凝集体の形成とそのメカニズムを明らかにすることを目指す。 本研究では、にごった状態の緑茶に光照射を行い、色の変化やカテキン類などの成分の変化について調べた。粒子径の異なる緑茶および抹茶を用いて緑茶溶液を作成し、透明のPET製の容器に移して、マグネットスターラーで撹拌しながらLEDの光照射を行った。経時的に色差、UV-Visおよび蛍光スペクトルの測定、カテキン、カフェインの分析を行った。その結果、粒子径の小さな緑茶(抹茶)ほど色差の-a*値が高くなったが、いずれも光照射による-a*値の減少が著しく、減少の速度に対する粒子径の影響はあまりみられなかった。UV-Visや蛍光スペクトルから、にごった状態の緑茶中のクロロフィルは、自己凝集体ではなく、単量体として存在していることが明らかになった。そのため、光による退色を受けやすいということがわかった。緑茶中のカテキン類の濃度を分析した結果、光を照射しなかった場合はほとんど変化がなかったが、光照射を行った場合は著しい低下が認められた。一方、カフェインは光照射に対して影響されず、濃度の変化はとほんどなかった。これらの成分の変化については、緑茶(抹茶)の粒子径にあまり影響を受けなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分光光度計の納入が遅れたため、にごった状態での緑茶のUV-Visスペクトルの測定などの実験が遅れ、予定していた研究をすべて行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、粒子径の異なる緑茶(抹茶)を用いて光照射実験を行ったが、粒子径の大きさによらず、光照射によるクロロフィルの退色を防ぐことができなかった。これは、溶液中のクロロフィルが自己凝集体ではなく、単量体として存在しているからではないかと考えられる。そこで、乳化剤を用いて自己凝集体を形成できるかについて検討を行うこととする。一方、“にごり”が緑茶の風味にどのような影響を及ぼすかについて、にごった緑茶とろ過を行った緑茶について、光照射による色の変化、および緑茶の味を示す成分(カテキン、アミノ酸)の分析を行う。さらに、食味検査にて、緑茶のにごりの有無がヒトが感じるおいしさにどのように影響するのかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分光光度計の納入が遅れたため、計画していた実験が遅れ、全ての実験を行うことができなかったため。次年度使用額については、翌年度分と合わせてやり残した実験を含めた研究に使用する予定である。
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