研究課題/領域番号 |
21K02167
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
柳澤 昌一 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (70191153)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教師教育 / 専門職教育 / 省察的実践 / 専門職学習コミュニティ / 実践コミュニティ |
研究実績の概要 |
①省察的実践とそのコミュニティの理論と長期事例研究アプローチの再検討:教師の実践的力量をめぐるもっとも重要な概念である省察的実践をめぐるD・A・ショーンの提起は、その著作において専門職の学習過程をめぐる克明な事例研究の積み重ねに基づいて展開されているが、従来のショーン研究、ショーンを踏まえた研究においてはそうした事例をめぐる分析が行われてこなかった。本研究においては省察的実践およびその力量形成をめぐって、ショーンの事例研究のアプローチそのものを検討し、そのアプローチを踏まえた専門職学習コミュニティの分析を進めていく。(Schon,1983,1987) ②教師の力量形成とそのコミュニティの機能をめぐる長期事例研究:①と関り教師の力量形成とそれを支えるコミュニティの機能についても、コンセプトの提起やそれを踏まえた数量的な把握に止まり、実際の事例、長期にわたる力量形成プロセスとそれを支えるコミュニティの機能について実際の事例に基づいた研究は展開されてきていない。本研究においては、福井大学教職大学院が関わる学校における長期的な教師の学習過程とそれを支えるコミュニティの機能をめぐる長期事例研究と世界的な取組の報告と比較して研究を進めていく。 ③専門職学習コミュニティの形成過程の歴史的事例研究:専門職学習コミュニティの形成過程は、個々の教師の力量形成過程より長い、歴史的なプロセスを伴っている。本研究においては福井・富山・長野をはじめとする地域における学校の学習コミュニティ展開の歴史を跡づける。 ④教育改革を担う教師の力量形成のための組織化への展望:上記の三重の事例研究およびその比較研究を通して、教師の実践的な力量形成を支える専門職学習コミュニティの形成過程明らかにし、新たにそうしたコミュニティを実現し発展させていくためのアプローチを提起することを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①省察的実践とそのコミュニティの理論と長期事例研究アプローチの再検討:『省察的実践者の教育』においてドナルド・A・ショーンはデューイに拠り、実践者の力量形成が実践者のコミュニティへの参画を通して実現されていくことに言及している。コミュニティ参画を通した長期的力量形成過程の解明が本研究の中心課題でありアプローチとなる。 ②教師の力量形成とそのコミュニティの機能をめぐる長期事例研究 ③専門職学習コミュニティの形成過程の歴史的事例研究 教師の実践的力量形成を支える専門職学習コミュニティをめぐる長期事例研究は、それが10年長の長期サイクルを追うことを必要とするために、歴史的な事例研究と連動させていくことが必要となってくる。福井大学大学院においては、2000年より長期実践研究報告として実践者の長期的な実践の歩みが記録化され蓄積されてきているが、昨年度は新たに20年以上教師の研修に携わってきた実践者に協力を得て、研修改革の実践記録の編集と蓄積を進めることが出来た。 ④教育改革を担う教師の力量形成のための組織化への展望:①②③のアプローチを踏まえ、生涯にわたる教師の実践力形成の現実的な展開とそれを支える編成をさぐり、その編成を持続的に高度化していくための機構への問いを進めていくことが課題となるが、本研究の成果を活かし、令和4年度より教職員支援機構との協働研修開発が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
①省察的実践とそのコミュニティの理論と長期事例研究アプローチの再検討:ショーンにおける省察的実践者の力量形成をめぐる叙述とその編成の中に、力量形成把握に求められるアプローチ・デザイン・多重構成フレームが組み込まれており、その解明は力量形成のためのカリキュラム・プロセスデザイン・評価の三重の構成のための理論的基盤となる。 ②教師の力量形成とそのコミュニティの機能をめぐる長期事例研究 ③専門職学習コミュニティの形成過程の歴史的事例研究 福井県における教師の実践的な力量形成をめぐる実践的な跡づけを継続的に進めるとともに、教職員支援機構における取り組みと関わる全国的な比較研究、福井大学で進められるエジプト・タイ等の教員研修とも連動させた比較研究を引き続き組織的に進める。 ④教育改革を担う教師の力量形成のための組織化への展望:①②③を踏まえつつ、また現在進みつつある教員養成と研修をめぐる改革の組織的な展開の理論的な枠組みを提起していくことが課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年12月に中央教育審議会において教員研修改革に関わる答申が提起され、令和5年度において研修改革の取り組みが組織的に展開されるため、令和5年度に集中的な実地調査および事例収集を進めて行くことがきわめて重要且つ効果的であると判断しために、令和5年度の研究のための予算を確保することとなった。
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