研究課題/領域番号 |
21K02169
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
大日方 真史 三重大学, 教育学部, 准教授 (00712613)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 公教育としての学校教育 / 保護者の共通関心 / ハンナ・アレント / 共通感覚 |
研究実績の概要 |
公教育としての学校教育の成立が保護者との関係において困難になっている状況をとらえつつ、研究代表者のこれまでの研究を通じて明らかになっている、保護者の意識において「共通関心」と呼びうるものが形成されうるという事実に改めて着目し、教師の教育実践を通じて保護者の学校参加の条件を形成して公教育の展望をひらく可能性を探った。 研究代表者のこれまでの研究では、教室の子どもたちや出来事へと向けられる「共通関心」が、教師の作成・発行する学級通信を読んできた保護者において形成される経緯や条件が明らかになっている。当該年度はそれをふまえ、保護者における「共通関心」形成までの経過は、何によっていかに媒介されているのかを追求した。追求にあたっては、政治思想家ハンナ・アレントの「共通感覚」論を参照し、アレントの「仕事」、「芸術作品」、「判断」、「活動」、「共通感覚」などといった諸概念とそれらの間の連関をもとに、保護者の意識変容の相へアプローチし、保護者はなぜわが子以外の子どもへも関心を向けうるのかを探った。 焦点をあてたのは、教師による「仕事(work)」としての学級通信作成、「芸術作品」としての学級通信、教師・保護者間の「共通感覚」、子どもの「活動」を記録する教師の「仕事」といった諸点である。 追求の成果として、アレントの「共通感覚」論から保護者における「共通関心」形成の相を整合的に解釈しうること、公教育の展望における保護者によるイニシアチブの意義、教師が子どもの「活動」を記録する「物語」の意義等が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一定の成果をまとめて論文を公表できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を統合しつつ、補足的な調査を進め、保護者の学校参加の条件となる教育実践に関する総合的な考察をなす。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定から調査実施場所と回数に変更があり旅費支出が抑制されたため。次年度調査のための旅費、物品購入で使用する計画である。
|