研究課題/領域番号 |
21K02179
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研究機関 | 弘前学院大学 |
研究代表者 |
奥野 武志 弘前学院大学, 文学部, 教授 (50802047)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教練 / 徴兵令 / 早期帰休 / 在営年限 / 明治前期 |
研究実績の概要 |
当研究課題は大正期の体操科教材「教練」の振興が図られる背景の解明を目指すものであるが、兵役負担の「階級的不平等」の意識が「教練」の振興という中等教育受益者への軍事訓練の本格化への要求につながったのではないかという仮説の検証が研究の大きな柱となっている。そこで、本年度は明治前期の徴兵令における早期帰休制の実態に関する未解明事項を解明することを試みた。一年志願兵といった在営年限短縮がどのように特典として意識されたかについて考察する前提として、早期帰休制度自体の基礎的研究が管見の限り見当たらなかったからである。 奥野武志「明治前期の徴兵令における早期帰休制に関する一考察」『弘前学院大学文学部紀要』第60号(2024年3月)が明らかにしたのは、以下の三点である。 ①「技芸」熟達者に対して在営年限を短縮する早期帰休は、1880年を例にとると、歩兵1中隊あたり4人、騎砲工兵1中隊あたり3人、輜重兵1小隊あたり1人といったように、兵種別の部隊毎に人数を割り振る形で実施され、1880年から1885年までは入営者の7%程度、1886年と1887年は10%程度が早期帰休の対象になっていた。②歩兵操練科卒業証書所持者に対する早期帰休制は、陸軍にとっての「教育上ノ都合」で挿入されたという解すべきである。③1889年の徴兵令改正の際、歩兵操練科卒業証書者に対する早期帰休制が廃止されるのは、一年志願兵の経費自弁が困難な者に対する官費支給が導入されたことにより、一年志願兵の有資格者が経済的な理由で一般現役兵として服役する事態がほぼ想定されなくなったからである。 以上により、兵役負担の「階級的不平等」の意識の研究に不可欠であるにもかかわらず未解明であった明治期前期の徴兵令における早期帰休制の実態の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年4月から現勤務先に雇用され研究を進める環境を得ることができたが、個人研究室への研究資料の搬入・整理等、研究環境の整備に多大な時間を要し、コロナ禍等による研究の遅れを取り戻すことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
資料のデジタル化が進展している状況を踏まえ、可能な限りインターネットを利用しての資料収集と読み込み、分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前所属先を解雇され求職活動に膨大な時間と労力を費やした2022年度に使用できなかった研究費の多くをほぼそのまま繰り越したため。
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