研究課題/領域番号 |
21K02180
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
井手 華奈子 創価大学, 教育学部, 准教授 (30532444)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | friendship / peace education / Okinawa / Military culture / Feminism / Philosophy of Education / Philanthropy / moral education |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、本研究の目的は、対立関係にある人々の間を平和的に取り持つことが可能な共生の思想に貢献するために、特に「友情」について概念考察することである。具体的には、在沖縄米軍人配偶者と沖縄の地元女性の間の友好交流史の事例を通じて、Political Friendshipの概念を発展させる。(A)政治的軋轢に一定の耐性をもつ「友情」の所在を明らかにすること、(B)その「友情」の特徴を描くこと、(C)その「友情」が芽生えたり、育まれたりする諸要因について分析すること、(D)その「友情」は社会的・教育的・道徳的に価値があることを論証すること、以上の4点である。 本年度の研究実施計画は、データベースを作成し、政治的対立に回収されない「友情」の所在を明らかにすることであったが、パンデミックの最中であったため、資料収集の活動とデータベースの作成には困難を極めた。パンデミックによって、沖縄現地へ赴くことも、米軍基地内に入ることも大きく制限されたばかりではなく、個人所蔵の史料を閲覧、収集するためには高齢者との対面での接触が避けられず断念しなくてはいけなかった。 しかしながら、教育哲学分野における査読付きの国際学術誌 Philosophy of Educationへの英語での論文掲載が一件、reviewのあった国際会議での英語での研究発表が1件、book chapterへの草稿論文投稿が1件、さらに、来年度、reviewのある別の国際会議International Network of Philosophers of Educationで研究発表をするための英語での論文を一件、合計4件、中間報告のレベルではあるが研究の成果を収めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相対的には、「おおむね順調に進展している」という評価になる。パンデミックによる混乱がもたらした影響が非常に大きかったことがその理由である。 当該年度の研究計画において、当初要であった、資料収集という点においては、「遅れている」という評価が妥当である。実際に沖縄に足を運んで、個人が所蔵する本研究に関連する歴史資料にあたることは、高齢者と対面でのやりとりが不可避であったため、全く実施することができなかった。また、パンデミックは米軍基地コミュニティと沖縄の地元のコミュニティーの交流を一時停止に追い込み、ほぼすべての琉米交流活動は一年以上にわたって実施することが不可能な事態に陥っていた。すなわち、想定していた新しい研究資料がそもそも存在しなくなったという負の側面があった、ということである。 その一方で、パンデミック前から地道に収集していた資料やこれまでの研究の蓄積によってパンデミックによる負の側面を大きくカバーできたため、研究成果を想定していた以上に順調に出すことができたので、こちらは「当初の計画以上に進展している」という評価である。英語圏の教育哲学コミュニティーにおけるトップ・ジャーナルに自身の単著論文を掲載することができたこと、アメリカ教育哲学学会において研究発表をおこない、その論文をブック・チャプターとして出版する準備ができたこと、さらに、来年度に向けてInternational Network of Philosophers of Educationにおいて研究発表するための論文の草稿を作成することができたこと、これらは大変大きな研究成果である。 そのようなことから、間を取って「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は以下のようにして進められる。 第一に、ブック・チャプターとして掲載が予定されている論文の最終稿を仕上げることである。第二に、8月に予定されている国際会議、International Network of Philosophers of Educationのreviewに論文が通った場合は、研究発表の準備、そして学術誌への論文掲載のための最終稿を仕上げることがあげられる。パンデミックや戦争という難しい状況にあるが、できる限り国際会議には現地へ赴いて発表できればよいなと考えている。第三に、当該年度にパンデミックの影響が原因で遂行できなかった資料収集を安全に遂行することがあげられる。自身の在住エリアの感染状況、沖縄の基地内、地元沖縄の感染状況に常に慎重でありながらも、パンデミックで遂行できなかった個人が所蔵する研究資料の収集になんとか着手したいと考えている。第四に、来年度以降に開催される国際会議において発表するための新たな論文を執筆することである。精進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由はパンデミックによる混乱が研究計画に大きな影響を及ぼしたこと、この一言に尽きる。繰り返される緊急事態が研究出張も研究成果出張も遂行不可能にしたこと、またパンデミックの緩急状況が場所によってタイミングが異なるため、米軍基地内と沖縄県内、さらに東京都の行動制限のポリシーが同時に「青信号」になるときがなかったことは本当に大きな痛手であった。
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