最終年度には、A県B市教育委員会の協力により、日本語教育担当教員が加配されている小・中学校全校の学力テスト(算数・数学)結果についての情報提供を受け、分析を行った。これにより滞日年数の長い外国人児童生徒の学力上の課題について、部分的・一面的にではあるが量的・質的に把握することができた。研究期間全体を通じて、小学校算数の授業見学、開発教材の試行、学級担任・日本語教室担当・学校長・教育委員会の外国人児童生徒教育担当等さまざまな関係者との意見交換を重ね、子どもたちの学習上の課題、関係者の課題認識についての理解を深めた。学会等での成果発表にとどまらず、他分野と連携しての実際的な学力向上策に取り組むことによる成果の還元を志向し、その第一歩として、「教科×ことば」プロジェクトを始動した。同プロジェクトでは、初等中等教育段階の教科学習を「ことばの教育」の観点から再構成するための実践・研究のプラットフォームとして、人と人とをつなぎ、経験や知見を共有し、そこから新たな取り組みを生み出すことをめざしている。2024年3月16日に開催した第1回研究会では、外国人児童生徒教育、算数・数学科教育、日本語教育がそれぞれ重なる領域に関心を寄せる研究者・実践者が、話題提供、ディスカッションを行い、新たな課題の発見と研究を進めるための示唆が得られた。 ドイツをはじめとする諸外国での研究知見の参照、国内の学校現場における教育状況の観察、研究分野を超えた学際的な交流を組み合わせて、複眼的、立体的に対象にアプローチすることができた。
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