研究課題/領域番号 |
21K02195
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
下村 智子 三重大学, 教養教育院, 准教授 (80557984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カナダ / 教育政策 / 資質・能力 / 先住民族 |
研究実績の概要 |
本年度は、ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)の新カリキュラムにおける資質・能力観と先住民族の視点や知識が反映されている実態を明らかにした。 BC州の新カリキュラムは,「概念基盤型学習」と「コンピテンシー重視型学習」をその特徴としている。育成を目指す資質・能力として「全ての児童生徒が深い学びと、生涯にわたって学習に取り組んでいくために育成が必要な知的、個人的、社会情動的能力」として、「コア・コンピテンシー」が設定されている。 先住民族の児童生徒の教育については、1999年に示された「先住民族教育改善協定」(その後、「先住民族教育向上協定」と改称)において、教育省、地方教育委員会、先住民族自治体の三者によって先住民族児童生徒の教育目標や教育内容が定められ、これに基づいてた先住民族の言語や文化に関する授業が導入されてきた。先住民族の児童生徒の学力保障のためには、教科として先住民族の言語、文化が扱われるだけではなく、地域住民が先住民族の言語や文化を地域の伝統や言語の一つとして理解し、受容することを通した先住民族児童生徒の学校への帰属意識の向上や地域社会の学校教育への参画が重要である点が指摘されてきた。それをふまえ、新カリキュラムでは、全学年・全科目に先住民族の視点や知識が統合され、全ての児童生徒が学習内容の一部として先住民族の視点や考え方について学ぶ経験をするという、学校教育を通じた先住民族の知の継承が行われている。 新カリキュラムでは、多様な先住民族の教授学習に対する考え方の中から共通した項目が抽出された9つの「先住民族の学習原理」が、先住民族の視点や知識の統合の基盤として設定されている。また、新カリキュラムの開発過程では、先住民族の教師やリーダー、専門家の意見も踏まえて、各教科の説明、目標、学習基準や例示などにこれらの先住民族の視点や知識が含められていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた三つの州のうち、ブリティッシュ・コロンビア州を中心に進めており、他の二州に関する調査が遅れているため。また、実施を予定していた現地調査を実施することができていないため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、進捗の遅れている他の二州について、先住民に対する教育政策に関する文献資料、21世紀型の能力・資質観に関する資料を収集と整理を継続して行うとともに、北西準州とヌナブト準州における資質・能力に関する議論と先住民族の教育政策の現状について、文献資料の収集と整理に着手する。また、収集した情報をふまえ、調査項目の検討を進める都共に、現地での調査の実施について、オンラインでの実施も含め、検討・実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた現地調査が、コロナウイルス感染症拡大の影響で実施できなかったために変更が生じた。今後は、現地調査及び成果発表に使用する予定である。
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