研究課題/領域番号 |
21K02203
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北野 秋男 日本大学, 文理学部, 教授 (50169869)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地方学力テスト / 教育政策テスト / 学習指導改善テスト / 学力と知能 / 学力と評価 / 学力調査 |
研究実績の概要 |
本年度は、「都道府県別地方学力テストの実施状況一覧表」を作成することを目標とし、一応の完成を果たした。分析項目は、地方学力テストの「実施主体」「実施内容」「テスト問題の作成機関と問題構成」「結果の分析内容」など、47都道府県に共通する項目を設定し、戦後から今日までの学力テストの実施状況を一覧表にすることを遂行した。この一覧表の完成によって、戦後から現在までの47都道府県の地方学テの特徴や内容的な差異が明らかになった。 次に、本年度において行った研究内容は「都道府県別地方学力テストの実施状況一覧表」に基づいて、47都道府県における地方学テの構造的特徴を分析し、歴史的に体系化した。また、「歴史的時期区分と特徴」と題して、戦後から今日までを5期に区分して、その内容的特徴を分類・整理した。「実施主体の分析」では、実施主体を「教育委員会」「教育研究所」「(総合)教育センター」「小中学校長会」「教育研究会」「その他(県教職員組合、大学などの研究機関)」などに区分し、学力テストの実施状況を整理した。「学力と知能(教育諸条件)の相関関係」では、学力テストを実施する際に知能検査を用いて、学力と知能の相関関係を調査した事例を分析した。「標準学力テストの開発」では、戦後直後から各都道府県で開発・利用された「標準学力テスト」「診断テスト」などに着目して、その実態を解明した。「授業・学習指導改善と学力テスト」では、授業・学習指導改善を目的とした調査・研究を対象に、実験授業・研究授業などにおいて児童生徒の学力の実態を検証した「事前・事後・把持テスト」などの実施内容を分析した。「全国教育研究所連盟の影響」では、学力テストを用いた学習指導改善に貢献した全教連の実態を分析した。「業者テストの影響」では、民間のテスト業者(特に教育委員会や学校現場と関係を持った業者テスト)の実態を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、学会発表3件、学会論文1本を研究業績として残すことが出来た。日本教育学会第80回大会(筑波大学:2021.8.25.)では、「都道府県別地方学力テストの実施状況」に基づき、地方学力テストの年代別実施状況や特徴などを報告した。同じく日本教育学会第80回大会学の「自由研究発表」(筑波大学:2021.8.26.)では「全国教育研究所連盟」による共同研究事業の実態、ならびに共同研究事業に参加した各都道府県における「地方学力テスト」の実施内容を報告した。日本学習社会学会第17回大会の「自由研究発表」(常葉大学:2021.8.28.)では、「地方学力テスト」と「業者テスト」と題して、業者テストの普及が及ぼした地方学力テストへの影響を報告した。 また、これまでの研究成果を学会論文として投稿し、審査を受けて掲載されたものが「全国の都道府県における『標準学力テスト』の歴史的展開」『日本学習社会学会年報』第17号、2021年8月20日、37-48頁である。同論文は、戦後直後から各都道府県で開発・利用された「標準学力テスト」「診断テスト」などに着目して、その実態を解明したものである。特に、「標準学力テスト」開発の背景や理由、経緯、問題点などに加え、北海道と愛媛県を事例として取り上げ、詳細に実態分析を行った。こうした戦後の「標準学力テスト」の開発・実施が各都道府県における個別の事情や条件に基づいて自主的に展開されたものであり、わが国の学力テスト政策の多様性を生み出す要因となったことも指摘した。 以上、本研究の進捗状況は非常に良好ではあるものの、各都道府県における資料発掘が非常に重要な課題となり、さらなる資料調査を必要とする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最大の課題は、各都道府県における資料発掘であり、さらなる資料調査を必要とする。そこで、本研究では従来の各都道府県立図書館や県教育センターに加え、各都道府県の県庁所在地の市立図書館も資料調査の対象に加え、さらなる資料調査を展開する予定である。また、国立国会図書館や日本大学文理学部図書館でも一層の資料調査を行い、未確認の資料や関連する文献の調査・収集を行うものとする。 また、そうした一次資料に基づく研究内容の進展に関しては、順調に進行しているとはいえるものの、新たな資料に基づく加筆修正、訂正なども必要とする。現在、本研究の内容分析の項目は、地方学力テストの「歴史的時期区分と特徴」、「実施主体の分析」、「標準学力テストの歴史的展開」、「学習指導改善テストの歴史的展開」、「学力と知能(教育諸条件)の相関関係」、「全国教育研究所連盟の影響」、「学習評価と地方学力テスト」、「業者テストの影響」、「特色ある地方学力テスト」の9項目を研究対象として、順次、研究を進展させる予定である。その成果をまとめることが可能となれば、体系的な研究書としての出版も可能となり、その方向での努力を継続するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の重要課題は、全国の都道府県における県立図書館・市立図書館・県教育(総合)センターなどでの資料調査と収集であるが、コロナ感染拡大の中で、こうした施設では利用者制限、時間制限などに加え、一時期において閉館ともなり、全く利用できない状況にもあった。従って、当初計画した資料調査と収集ができなくなった時期もあり、そのために使用額が大幅に減少した。本年度は、現状では、一部の都道府県を除いては、こうした施設での利用状況はいまだに時間制限などがあるものの、利用可能な状況となっている。本年度は、当初の研究計画に基づいて着々と研究を進行させる予定である。特に、これまで資料調査が出来なかった都道府県を対象に、順次、調査研究を進める予定である。
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