研究課題/領域番号 |
21K02208
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
赤星 まゆみ 西九州大学, 子ども学部, 教授 (50150975)
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研究分担者 |
小笠原 文 広島文化学園大学, 学芸学部, 教授 (10585269)
石黒 万里子 東京成徳大学, 子ども学部, 教授 (90510595)
松本 大輔 西九州大学, 子ども学部, 准教授 (20624498)
園部 ニコル 西九州大学, 健康栄養学部, 講師 (00736910)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育学 / 学校教育 / 農村学校 / 教育政策 / フランス / 学習経験 / 小規模校 / 異学年編成学級 |
研究実績の概要 |
今日、農村教育は、単に人口減少に対応した学校統廃合の問題としてだけでなく、農村学校における子どもの学習の質の問題となった。農村の子どもや若者の質の高い学習を保障する政策や実践が必要とされている。そこで、本研究は、農村教育に関する先行研究や多様な文献資料を分析してフランス等の農村教育・農村学校に関する省察を行い、その実像を明らかにして新たな革新的な可能性を見出そうとするものである。初年度の取組、成果は次の通りである。 ①文献調査:農村教育に関する先行研究の精査と資料収集(欧文、和文)を進め、その成果を共有するため、オンラインでの研究会を4回開催した。まず、「子ども・若者の学習経験の分析・考察の研究視座」と題する研究会を開き、研究方法に関する検討を行うとともに、学習経験の概念を共有した。さらに、「日本の教育における地域格差の先行研究」「オーストラリアの農村学校の実情」「フランスの農村学校に関する最近の争点と黄色いベスト運動」「小規模校の教育に関する調査報告-広島県のある小学校の事例」「ICTによる遠隔教育」等についての情報共有を行った。とくに、「テリトリー」や「ローカリティ」といった概念で地域への再注目について情報交換し、「テリトリー」概念を軸に研究を進める必要性を確認した。あわせて、農村教育におけるジェンダー視点の有効性を確認した。 ②基礎文献として、OECD論文<Learning in rural schools>(OECD Education Working Papers No. 196)の翻訳と検討会を行い、国際的な農村学校研究の意義と課題についての共通理解を得た。 ③研究成果は、学会発表2本(日仏教育学会、中国四国教育学会)、雑誌論文3本(フランス教育学会紀要、中国四国教育学会教育学研究紀要、広島文化学園子ども子育て支援研究センター年報)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の社会状況の下、研究には多くの制限があり、十分な成果を公表することができたとはいえないまでも、初年度としては、オンライン研究会を重ね、基本的な研究作業の方向性を共有して、ある程度の成果を発表でき、今後の方向性を明らかにすることができた。 また、海外での調査を行うことができなかったが、国内調査については、一部、まとめ作業を行い、成果を発表することができた。地道ではあるが、少しずつ、着実に前に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、農村教育に関する先行研究、また、諸統計・政策文書等、社会学・地誌学・歴史学などの関連する研究成果、さらには文学や写真・映像等を含む広範囲の文献資料を丁寧に分析して、フランスやその近隣諸国等の農村教育・農村学校の実像を明らかにする。また、先行研究が明らかにした、農村教育・農村学校の特長・利点を検証し、農村教育の「一般的な教育の側もそこから学習する可能性や、未来に向けての新たな教育方法や政策を見出すリソースの提供」に関わる研究結果を導こうとするものである。初年度の成果を踏まえ、今後は、次のような手順で研究を進める。 ①文献調査:引き続き資料収集を行い、農村教育に関する検討、諸統計・政策文書等の検討、社会学・地誌学・歴史学的検討という三つの柱で先行研究を精査する。その結果を相互に共有し、研究計画を再考しながら、適切に研究を進める。そのため、オンライン研究会を2年度目に5回程度開催する。なお、その内、講師を招聘して特定のテーマを深めるための研究会を1回以上行う。 ②実践調査:フランスの教育実践では、映像資料を活用したフランスの実践分析を行う。また、比較のための日本やオーストラリアの実践(へき地・離島)を調査する。また、その記録(映像資料等)を作成する。なお、フランスでのフィールド調査が必要であるが、それが可能になるかどうか、今後の社会の状況を見て判断し、準備する。 ③ 研究レビュー:上記の文献調査の過程で必要となる、フランス等の研究者からの助言や新しい知見の提供を受ける機会をオンライン国際研究交流会(3年度目に2回程度)として設定する。その準備、事前交渉を行う。 ④ 成果発表:研究会を積み重ねて、成果を、報告書(最終年度)としてまとめるとともに、国内外の関連学会での研究発表や論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じたのは、主に、COVID-19感染拡大を受けて、海外・国内、ともにフィールドワークを行うことができなかったことによる。そのため研究計画の見直しが相次ぐことになり、対応が遅れた。また、初年度の研究ということもあり、資料収集に時間を要したため、文献の翻訳への着手が遅れ、年度内に翻訳依頼を行うことができなかった。2年度目に、所記の計画通り、資料収集、翻訳料、動画作成に要する費用等として使用する予定である。
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