研究課題/領域番号 |
21K02217
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
相澤 伸幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20331259)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教育哲学 / 道徳教育思想 / 森有礼 / ハーバート・スペンサー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「ニヒリスティック・ケイパビリティ」という新しい理念を提唱し、その理念を教育学の前提として織り込んだ場合の人間形成観・教育観を検討し提案することである。その実現のための目標の1つとして、日本やドイツでの調査研究をはじめに行う予定ではあったが、COVID-19の影響が大きく、海外や国内の移動が制限されたため、初年度は文献研究からスタートさせた。 まず取り組んだのは、近代ヨーロッパの教育思想を日本がどのように受容し、現代の教育の学的基礎づけを図ろうとしたのか、その系譜を歴史的に解明しようとすることであった。その中でもとくに、森有礼とスペンサーの関係に着目しながら、その特異性がどこにあるのかをたどっていった。スペンサー受容は、英米の最新の思想の窓口としての機能も果たしており、そのため、明治や大正期の日本のアカデミズム全体に対するスペンサーの思想の影響は、より広大であったことがわかった。しかし、詳しく調べていくと、スペンサー受容だけではなく、A・スミスやベインらの心理学的理解も取り込んでいることもわかった。たとえば、「シンパシー」概念などの近代教育学への受容はその時の成果ともいえる。その結果、本来は啓蒙主義的で先進的であったはずの福澤諭吉などからも反発を受けたという点が重要である。 これらの成果を踏まえ、論文「森有礼の思想にみるH・スペンサーの影響 ―『倫理書』を参考にして―」を執筆し、『プロテウス』第21号に掲載された。この試みにより、現代日本の教育思想における出発点や学的基礎づけの端緒の1つが解明できたと考えられ、たんなる啓蒙的な教育思想だけではない、現代教育思想あるいは道徳教育思想の萌芽を読み取ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響のため、国内外での調査は中止せざるを得なかったが、それ以外は当初の計画通り進み、成果としての論文も発表できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響が予測つかないため、国内外での意識調査の実施や分析を見直し、別のアプローチによって成果が出せるように検討をはじめる。そのほか、文献による理論研究については、予定通り進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、国内外での調査がすべて中止となり、活動が著しく制限されてしまったことから、次年度使用額が生ずる結果となった。次年度以降の計画を修正することで、この状況は徐々に改善されていく予定である。
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