研究目的は薬学教育を生涯教育と捉え 、「学部教育」と次の段階の「新人薬剤師教育」を繋げる大枠を大学側の教育視点から作成すること、また、「社会のニーズ」や「薬剤師として求められる資質・能力」を踏まえて検討し、各大学の多様性を見極め、寛容性(柔軟性)のあるフレームワークとしての大枠を作成することである。 研究の方法は既に研究代表者が報告した結果と新たに他職種からのニーズ調査を行い、各大学のDPに沿った教育をどのように構成するかについての見解を教育概念および調査結果から構築した。 研究成果1、「基礎的な科学力」を発揮するための「基本的な知識」が不足している学生が増え、その起因として、学力よりも意欲・適正の評価の比重が多い大学入学試験科目・入試区分が起因している可能性を明らかにした。さらに、「薬物療法における実践能力のうち、処方解析能力」が低いとの医師評価からは、大学で教える薬の知識や一般的な薬物療法を患者に個別適応できていない可能性が示唆され、一般的な薬物療法を個別化治療に適応するための資質の育成が現教育では不十分であり、方略の場面設定の必要性が示唆された。 研究成果2、教育の質を保証するため、各大学のカリキュラム作成の工夫を提案した内容である。ⅰ)学修成果とその到達度の明確化については、Miller’s pyramidあるいは認知能力・非認知能力の概念を用いて、教員間で到達度を決めて共有すること、その後、必要に応じてその到達度までのステップを決めて学生および教員と共有することである。ⅱ)各大学のDPに基づいて場面を設定し、評価することの事例やDP到達度をPEPA科目を設定し評価すること、ⅲ)プロフェッショナル教育については、海外で実施されているゼロ単位科目を例とし、与えられた課題ではなく、自ら興味のある内容について調査してまとめるなどのポートフォリオの作成を提案した。
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