研究課題/領域番号 |
21K02231
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
上野 景三 西九州大学, 子ども学部, 教授 (30193824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小さな拠点 / 公民館 / 社会教育 / 地域課題解決 / 学習シート |
研究実績の概要 |
本研究は2年目に入る。2年目では、全国データの整理を完了させ、全国的な傾向の分析を行った。その上で、公共施設、とくに公民館との関連について検討を行った。さらに九州地区の「小さな拠点」事業に取り組んでいる特徴的な自治体(長崎県諫早市、佐賀県伊万里市、鹿児島県薩摩川内市)をピックアップし、ヒアリングを行った。これらの調査をもとに、日本公民館学会での学会報告、所属大学研究紀要にて研究論文を報告した。その際の仮説と検証結果は、以下のとおりである。 仮説的問題関心:①社会の縮減に伴い公共施設の多くは撤退するが、公民館も同様に撤退するのかどうか。②国の地域コミュニティ政策を展開している関係省庁の複合的かつ相互連携下で、公民館は公民館として存続するのか、それとも衣替えを求められるのか。③「小さな拠点」事業の下で、公民館はどのような位置づけを与えられるのか。④「小さな拠点」事業の下で、公民館(もしくは地域センター等)の運営や事業は、どのようなものになっているのか。 検証結果:①公民館の存続は、自治体の判断による。選択肢は、いくつか考えられる。②公民館は、地域運営組織との関係性において性格づけられることになる。③複合的な施策展開の中で、公民館の変容が迫られる可能性が高い。自治体の「まち・ひと・しごと総合戦略」に位置づけられることによって、施設の老朽化に伴っての転用が一つの方法として考えられている。④地域運営組織の設置が最重要課題であり、地域運営組織の構成員の学習活動が不可欠となる。だが、その点については不明である。公民館の役割はみえにくいのが現実である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、本テーマにかかる関連領域の研究進捗状況について可能な範囲で把握した。2年目においても引き続き関連領域の研究状況の把握につとめたところ、社会教育学研究をテーマにした研究が進められていることがわかった。それらの研究を踏まえ、研究枠組みの検討を行ったが、申請時に提出した仮説的な枠組みに変更を迫るような点はなかった。したがって、基盤整備型研究-ソフト事業型研究、予防的研究-対策的研究の4項目の掛け合わせで整理することとした。 その上で、引き続き、全国データの整理を行い、すべての「小さな拠点」のデータ整理を行うことができた。ただし研究申請時のデータ数に基づいている。さらに、地理学の手法を援用し、九州地区に限定して「小さな拠点」と学校統廃合との関連、及び公民館との関連についてマッピングの作業に着手している。 研究の成果としては、中間的な報告として日本公民館学会の第21回研究大会での学会報告、並びに学会報告を踏まえ「小さな拠点」形成と地域公共施設の関係性についての研究」(2023.3 『西九州大学子ども学部紀要』第14号 37-49頁)として執筆し、発表した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に想定していたよりも、データの量が多く、全国データのとりまとめに時間を費やした。ようやく全体的な整理ができたことから、地理学の方法を援用し、「小さな拠点」と公共施設(公民館)との関連について解明することできる条件がそろいつつある。今年度は、全国マッピングに取り組むこととしている。 次に「学習シート」の開発については遅れているが、3年目の課題としている。すでに実験的に地域課題解決のために作成していた「学習シート」(未定稿)について公民館関係者、「小さな拠点」関係者に協力を得て聞き取り等を行い、完成版の作成にむかうこととしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2年目もコロナ禍において旅費の支出が限定的であったためである。調査も九州地区内に限定され、学会発表もリモートで行わざるをえなかった。 今年度の計画は、一つは全国データのマッピングの作業である。これはアルバイトを引き続き雇用し、行う。二つには、九州地区以外の特徴的な自治体担当者及び「小さな拠点」関係者へのヒアリング調査である。そのための旅費が必要となる。三つには、学会報告(長野県予定)を行う予定であるため、旅費として使用する予定である。
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