研究課題/領域番号 |
21K02237
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
青木 一 信州大学, 学術研究院教育学系, 特任教授 (90754341)
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研究分担者 |
伏木 久始 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00362088)
鎌野 育代 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (10794951) [辞退]
多田 孝志 金沢学院大学, 文学部, 教授 (50341920)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベテラン教員 / 研修プログラム / 学び直し / 主観的幸福感 / 貢献力 / ロールモデル / モチベーション |
研究実績の概要 |
改正地方公務員法により2023年4月1日以降、地方公務員は2年ごとに1歳ずつ定年が引き上げられ、2031年に完成年度を迎える。このことにより、教員の教職人生の設計や学校運営にかかわるマネジメントが大きく変わることに着目した。1つ目は自身の問題として、定年延長を経て再任用を希望した場合、勤続年数が大幅に延長することになり、これまでの先輩ロールモデルが参考にならないということである。すなわち、自身が新たなロールモデルを構築していかなければならない。そこで管理職の場合、校長を65歳定年まで継続する道もあれば、定年まで継続せず、一担任としてマネージャーからプレイヤーにポジション替えをするキャリアパスの調査を行った。また、従来通り、60歳で一区切りをつけ、時短勤務に切り替え、自分の人生に余裕をもって過ごす生き方も選択肢として存在する人の追跡調査を行い、それぞれのロールモデルを追求した。2つ目は、学校運営上、年齢別教員数に着目した。A県A市では50歳以上の教員(管理職を含む)が50.7%という高い割合を占このうち「ベテラン教員」の8割が再任用(社会教育関係を含む)を望んでいる現状から、「ベテラン教員」の割合が増えることが予想され、2027年度には50歳以上の教員は60.2%に上昇すると試算した。3つ目は「ベテラン教員」に蔓延る「無意識の老齢化」に着目した。「無意識の老齢化」の定義づけと共に、昭和40年のわが国の平均寿命(男67.74歳,女72.92歳)と令和3年(男81.41歳,女87.45歳)を比較し、昭和40年の平均寿命を加味した計算に基づく換算で単純計算した結果、男性の場合39.29歳の意識を持つべきということがわかった。これからの調査結果から、「ベテラン教員」の新たな役割を明らかにし,その意識と力量を向上させるためのOJTおよびOFF-JT研修講座のモデル開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国教育行政(教育委員会・教育センター)の「ベテラン教員」研修の実態調査は順調に進んでいる。2021年6月に教職員支援機構信州大学センターでは、全国都道府県・政令市・中核都市の教育センター(教育研究所)106か所に「ベテラン教員研修」のアンケートを行った。その結果、実際に「ベテラン教員研修」を推進しているところは16か所だった。しかし、その後、「ベテラン教員」研修を重要視している教育行政の存在があり、再調査をかけている。また、「ベテラン教員」研修モデル構築のため、A県とB市の教育センターに協力を得て実践を行っているが、夏場に限定されているため、来夏を待たなければならない。 現在、シニア就業率の高いニュージーランドに着目した。ニュージーランドは小国であるものの、国民の経済的豊かさはわが国と同様であり、ジョブ型雇用システムのもと、シニア就業が急速に拡大し、就業者の満足度も高い。そこでわが国とニュージーランドのシニア就業を巡る環境の比較(働く意欲と働きやすい環境の整備)を調査中である。調査項目は①1999年定年制廃止に準じ、教員の定年制も廃止か。定年制がある場合は何歳か。その後、シニア就業として教員を継続しているか②教員のシニア就業は広がっているか。あまり広がっていないか。③教員のシニア就業は満足度が高いか低いか。その理由は。一般的と個人的④教員のシニアおよび「ベテラン教員」のスキルアップを図るため、ニュージーランドではどのような世策をしているか。シニア教員の職業教育訓練の機会はあるか。「ベテラン教員」の学び直しはあるか。である。これらの調査結果から本研究の到達点であるマイスター教員への研修プログラムの修正を図る。調査は8月に予定している。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力の関係にあるA市教育センターでは,市内小中学校の50歳前後の「ベテラン教員」に対し,「キャリアⅣ」(30年経験者研修)の研修講座を開設している。同センターは「ベテラン教員」の学校マネジメントの関わり及び次世代教師への育成を鑑みた貢献力の向上を期待しており,テーマは「貢献力UPのストラテジー(戦略)」として、どのように学校運営に貢献していくかの戦略を立てるものである。本年度はこの研修講座を受講した教員の追跡調査をおこない、マイスターへのロールモデルを追究する。 同じく研究協力の関係にあるB県教育委員会「マイスター教員研修」として「ベテラン教員」(次世代育成期相当)の教員を中心に、再任用や充実期相当の教員を含め、希望研修として位置付け、個人のマイスター力量を高めるメソッド(技能)の向上とともに, フィロソフィー(哲学)の涵養を問うた内容のバージョンアップを図る。 この2か所に通底していることは、定年延長が自身のWell-Being(幸福感)につながらなければいけないというところである。昇給や昇進というモチベーション2.0(外発的動機づけ)を超越した「ベテラン教員」にとって、幸せは「貢献力」に依拠するという状況を明確なエビデンスをもって明らかにすることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度、感染症の影響による聞き取り調査の中止および延期、出張の取り止めなど予定していた調査活動が再開し、各教育委員会・教育事務所・教育センター等での調査・実践活動を行う予定である。それに伴う旅費および調査補助の人件費を予定している。
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