研究課題/領域番号 |
21K02250
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
山本 由美 和光大学, 現代人間学部, 教授 (00442062)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シカゴ教員組合 / アメリカ教育 / コミュニティ・スクール / グローバル都市 / 新自由主義教育改革 / SDGs / 学校統廃合 / ジェントリフィケーション |
研究実績の概要 |
シカゴ市の学校の状況、コロナ禍の中及びコロナ禍後の状況について、シカゴ市に訪問し、シカゴ教員組合の教師からインタビューを受けることができた。(2022年6月18日) 2022年、シカゴ市で行われたレイバーノーツ大会において、シカゴ教員組合と日本の教職員組合とのセッションが行われた際に、十数名の教師から聞き取りを行った。さらに、その後ジャクソン・ポッター副委員長からZoomなどにおいて状況を聞き取り調査することができた。 コロナ禍で、教員教師が地域コミュニティに生活物資を車で配布し、家族の悩みを聞き、感染への懸念から、児童生徒の家族がリモート授業を選択したいという希望を確認していった。それを受けて、市当局に対して市が提案するハイブリッド授業ではなく安全が確認されるまでリモート授業を実施することを運動として要求していくことになった。市当局による厳しい対応(リモート授業のネットワークの遮断)なども見られたが、結果的に教員組合は支持され、教師と保護者、地域住民の信頼関係は強まった。また安全な学校再開を行うための諸条件を獲得するために、教員組合は当局と団体交渉を行った。その結果、事前のワクチン接種、PCR検査、防御態勢、学校安全員会の設置(学校再開を判断する)、持続可能なコミュニティ・スクールの拡大などの条件を要求し、それらのうちいくつかについて獲得した。例えば、抗体検査の実施など、対策のいくつかは次の感染の対策に活かされ、学校はより安全な再開を迎えることができた。これらの内容については、研究所の教育フォーラム、雑誌論文などで日本において公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年6月に、研究対象の米国シカゴ市を訪問し、持続可能なコミュニティ・スクールの開設を要求してきたシカゴ教員組合のメンバー複数に聞き取り調査を実施することができた。さらにコロナ禍において、組合が提出した、持続可能なコミュニティ・スクールの拡大を望む要求などを含む団体交渉事項を確認することができた。 コロナ禍においてシカゴ教員組合は、保護者、地域住民との共同関係を背景に、安全な開講条件が獲得されるまで、ハイブリッド授業ではなくリモート授業を行う要求を当局に出しそれは実現されていった。その中で、どのような教育条件整備要求が実現し、あるいは実現しなかったのか実態を調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、コロナ禍後の学校の変化、4月5日のシカゴ市長選挙によって教員組合出身のジョンソン市長が誕生した後の教育政策の変化について調査研究していきたい。検証結果をまとめ社会的に公表していくことをめざす。具体的な研究課題は以下のようなものである。 (1)実際、再開された学校の状況について検証する。長期間の学校閉鎖、リモート授業の継続後の学校の状況、保護者、地域との関係の変化について、文献、インターネット上の情報、可能であれば訪問調査などから検証する。特に持続可能なコミュニティ・スクールの学区のケースである、ケンウッド、オークランド地区について検証したい。 (2)Caucas of Rank-and-File Educators の活動について、シカゴ教員組合の中に2008年に結成されたCaucas of Rank-and-File Educators(CORE)が、反民営化、反統廃合を掲げて市民との共同を形成していった。COREはその後、他の市にも拡大している。2023年7月28日からCOREの全国規模の会議が開催される。 そこで、現在の米国におけるCOREの活動について調査研究を行う。 (3)アメリカの教員組合運動、労働運動について、シカゴ教員組合など教員組合が牽引し、他の分野においても労働組合結成、ストライキなど労働運動の“高揚”が見られる状況について、改革を進める背景として検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に予定していた米国シカゴ市の持続可能なコミュニティ・スクールの実態調査については実施することができなかった。その理由として、第1に、コロナ禍のもとでシカゴ市の公立学校は長く休校、オンライン授業が行われていたため、対象の学校の実態や実践について十分にまとめたものを発見できず、その検証、資料を確認することができなかったことが挙げられる。 第2に、シカゴ市で行われたレイバーノーツ大会に参加し、シカゴ教員組合やほかの労働運動の運動理念、実態については調査することができたが、さらに各学校の事例について調査を進める時間的余裕がなかった点もあげられる。
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