研究実績の概要 |
今年度の研究実績は以下の2点に整理できる。第一に、前年度に引き続き、地域づくりにおいて後継者がエージェンシーを達成するための学習論的条件について理論的に整理した。具体的には、地域づくり実践において作用しているナラティヴ学習に注目した。地域社会のバイオグラフィーを学ぶことが住民のエージェンシーと結びつくことを明らかにした。地域社会には重層的な課題や矛盾が存在するため、地域社会のバイオグラフィーを学習することには不安定さが伴う。しかしその共同的な試行錯誤の学習の過程にこそ、人々のエージェンシーや社会関係が創発される契機があることを提起した。この研究成果を、Matsumoto, D. (2024). Reconstruire la communalite(') par l’apprentissage narratif: L’e(')ducation sociale et le de(')veloppement communautaire au Japon. In Suemoto, M., Morioka, M., & Breton, H. (Eds.), Histoires de vie en formation et clinique narrative au Japon: E(')mergence, de(')ploiement, mutation (pp. 95-110). Paris: L'Harmattan.として公表した。 第二に、当該テーマに関連して今年度は国際的な研究ネットワークの構築を進めることができた。特にナラティヴやライフストーリーと成人教育に関する理論的な整理については、フランス・トゥール大学のエルヴェ・ブレトン教授を中心とした学術的な交流が広がった。。7月にはトゥール大学主催の国際ウェビナーにて、「Rebuilding the community through narrative learning: Social education and community development in Japan」と題して口頭発表するとともに、10月にはエルヴェ教授を東北大学に招待し国際的なセミナーを開催することができた。なお10月のセミナーでは、本科研の研究分担者である山形大学安藤耕己教授がコメンテーターを担当した。
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