研究課題/領域番号 |
21K02261
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
竹川 慎哉 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30513311)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 批判的リテラシー / 教師教育 / 政治的中立性 |
研究実績の概要 |
本研究は、①教師が持つべき批判的リテラシーの構成要素の解明とモデル化、およびその形成のための教師教育プログラム(教員養成・現職教育)の開発、②そうした教師の批判的リテラシーはどのように授業づくりに発揮されるのか(指導論)の解明(政治的中立性の捉え直しに基づいた指導論の提案)を目的としている。 2021年度は、「批判的であるとはいかなることか」、「政治的中立性とは何か」という本研究の基盤となる概念について、政治学、哲学の文献検討を通して整理をし、論争性や差異性を前提とした対話的状況が「批判的」「政治的中立」の意味であるとの見解を得た。 また、これらの概念を枠組みとしながら国内の教育課程分析を試みた。Society 5.0実現に向けた学習として進められている教科横断的資質・能力と学びの個別最適化がもつポリティクスを分析した。財界、経産省、文科省の政策提言文書の分析を通して、日本における「教科横断」の要請がSociety 5.0に代表されるデジタル社会の実現という観点に大きく偏っていることを明らかにした。とりわけ高校段階では、教科横断学習の内容(SSH等の探究学習中心と地域課題の学習)と高校の多様化政策とが連動していることを明らかにし、教育内容の階層格差が進行する危険性を指摘した。他方、子どもたちの生活現実の課題を軸に教科横断学習を実践した事例を分析し、「事実の複数性」を学習者に認識させていくことが、支配的な教科横断の政治性を脱構築する一つの方向であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となる「批判的であるとはいかなることか」、「政治的中立性とは何か」という概念検討の作業を進めることができた。また、これらをベースに2022年度の授業実践分析につながる基礎的作業として、Society 5.0に向けた教育課程の現状と課題を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に行った概念整理を枠組みとしながら国内外の授業実践を分析し、そこで行使されている教師の批判的リテラシーを指導技術の中から明らかにする。2022年度は、実践記録として刊行されたものの分析および教室での授業研究を行う。また、次年度の調査の準備作業として、カナダ、オーストラリアにおける批判的リテラシー教育の現状、教師教育での位置づけなどについて情報収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染の状況により学会や資料収集のための出張が計画的にできなくなり、旅費の残額が多く生じた。 また今年度の研究課題である「政治的中立性」概念の検討が十分出来ず、文献購入が予定より少なくなったためである。 2022年度は2021年度出来なかったこれらの活動を行うため、残額は速やかに使用できると考えている。
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