研究課題/領域番号 |
21K02268
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
大迫 章史 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60382686)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 私立学校 / 新制大学 / キリスト教主義学校 / 設置形態 / 戦後教育改革 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍の影響を受け、予定していた史資料収集調査を十分に進めることができなかった。しかしながら、図書館の相互利用等により、本研究課題に関する史資料の収集を実施した。 今年度、本研究課題に関わって最も進めることができたのは、戦後教育改革における新制大学に関するものである。具体的には、戦後教育改革期の新制大学の設立経緯について、カトリックおよびプロテスタントのキリスト教主義学校がいかなる形で新制大学を設立したのか、また、なぜ他の新制大学に先んじてキリスト教主義学校により設置が認可されることになったのか、その特徴や理由について明らかにすることができた。キリスト教主義学校は、戦後教育改革の実施に大きな影響を与えたとされる連合国軍総司令部(GHQ)や民間情報教育局(CI&E)との間にパイプを有しており、これを活用して、これらの組織に積極的な働きかけを行いながら大学設立の手続きを進めることで、他の新制大学よりも先行して認可を受けることができたのである。あわせて、連合国軍総司令部や民間情報教育局の側も戦前にキリスト教主義学校が置かれていた状況に対する反省をふまえ、積極的にキリスト教主義学校による大学設置を進めていこうとする姿勢をもっていた。 また、連合国軍総司令部や民間情報教育局は女子教育の振興を図っていこうとしたが、この点についても女子教育をおこなうキリスト教主義学校にとっては追い風となった。その際、プロテスタントの女性宣教師が大きな役割を果たしたと推測される動きがあった。 上記とは別に本研究課題に関わることとして、昭和戦前期を中心として、戦前の私立学校の設置形態に関する論議等があったことを確認し、これに関する史資料の所在等についての調査を進めることができた。また、文部省としても、私立学校の設置形態に関して新たなあり方を模索する姿勢をもっていたことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の本研究の進捗状況については、やや遅れていると判断した。 本研究課題は、昭和戦前期あるいは戦後改革期の文部省の教育政策やこれに対する私立学校の動きをおっていく必要があるため、その遂行にあたっては国立公文書館や都道府県の公文書館あるいは私立学校などの現地におもむいて史資料収集を実施することが不可欠である。そして、これらの史資料を分析することで研究課題の解明に取り組むことができる。しかしながら、今年度は新型コロナウィルス感染拡大の状況下において、本務先の県外出張等が制限されていたこともあり、当初計画していた形での史資料収集を十分におこなうことができなかったため、このような判断となった。とはいえ、現状において、できるだけ研究を遂行する必要があるため、昭和戦前期を中心として当時の雑誌等に掲載された関連資料を調べ、図書館における相互利用などを活用することで、一定程度必要な史資料は収集することができたと考えている。 また、今後新型コロナウィルスの感染状況が落ち着いて調査の実施が可能となった場合に備えて、現在できることをやっておく必要から、私立学校における関連の史資料の所在については、学校等に問い合わせをするなどしてある程度確認することはできており、あわせて各公文書館の検索システムや所蔵目録等を活用して、教育行政関連の史資料の所在確認にも努めた。 本研究を実施していくにあたって、初年度においては、先行研究をおさえておくことも重要となってくる。これに関しては、昭和戦前期および戦後教育改革期の私立学校の設置形態に関する書籍や論文、当時の時代・社会状況を把握するために重要な書籍や論文等を含めた研究文献の収集を実施したが、史資料との関連で必要となる研究文献は十分に購入できていないものがある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に関わる今後の推進方策に関してであるが、現時点では「現在までの進捗状況」で述べた点を除いては、これまでの研究計画を変更することなく、研究を着実に遂行していく予定である。現段階での見通しではあるが、新型コロナウィルスの感染拡大状況も落ち着きをみせつつあるため、次年度は国立公文書館、都道府県等の公文書館および私立学校等に対する史資料調査をできるだけ計画どおり実施したいと考えている。これにより、今年度生じてしまった研究の遅れを取り戻すことにも努めていきたい。 そこで、具体的な推進方策であるが、昭和戦前期・戦後改革期の私立学校の設置形態に関する史資料の所在(公文書館あるいは各私立学校)をより明確にしつつ、先行研究の分析などをふまえ、収集すべき史資料をある程度特定することで、調査訪問先を絞り込んで効率的な史資料の収集に努めたい。その際、調査訪問先の受け入れ等に関する情報収集もおこなっていくこととする。また、今年度に引き続き、次年度も当時の教育関連雑誌などにおける私立学校をめぐる記事等の確認、収集をおこなっていく。 そして、収集した史資料の分析を丁寧に進めることで、近現代日本における私立学校の設置形態の連続性・非連続性を明らかにするという本研究課題を解決していくための研究をすすめていく。これにより、次年度予定している研究成果を得ることとしたい。 あわせて、上記で得られることになるであろう研究成果に関わって、所属している学会等では、新型コロナウィルスの感染拡大状況をふまえオンラインを活用して実施する形態も増えつつある。そこで、これらの機会を積極的に活用して、研究成果の公表に努めていくとともに論文を執筆することで研究成果の活字化をおこなっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウィルスの感染拡大状況により、本務先による県外への出張制限があったため、当初予定していた公文書館や私立学校等への史資料収集のための出張等ができなかったことによる。本研究は、これらの機関へおもむいて、研究の遂行に必要な史資料の収集が不可欠であるため、今年度これらの機関へ出張するための旅費を比較的多く計上している。また、これらの史資料を撮影する機器等についても、パソコンを除いては、今年度購入できていないものがある。また、収集した史資料を分析することによって、必要となってくる関連する書籍、論文などの研究文献を選定し購入することが求められるため、書籍費等についても十分に使用することができなかったものがある。 そこで、現状では新型コロナウィルス感染拡大状況にも落ち着きがみられるため、次年度は、計画どおり、公文書館や私立学校等への史資料調査を実施するとともに、あわせて可能な限り、今年度の予定していた史資料調査訪問先への出張なども実施することで研究遂行の遅れを取り戻していくこととしている。また、収集できた史資料に関連するところでの研究文献の購入などもおこなっていく。これにより、次年度使用額ならびに翌年度請求している助成金を計画的に使用する予定である。
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