研究課題/領域番号 |
21K02270
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
熊田 凡子 関東学院大学, 教育学部, 准教授 (80744333)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 女性宣教師 / 保育者養成 / 進歩主義教育 / 日系人収容所 / 教育活動の継続性 / 教育者・保育者のまなざし / 戦前・戦後の連続性 / ナースリー・スクール |
研究実績の概要 |
2022年度は海外調査と国内調査を行い、女性宣教師の戦前・戦後の教育活動の特性と継続性及び女性宣教師に学んだ日本人保育者の教育実践の継承に関する考察を行い、公表した。 2022年8月18日~23日米国ロサンゼルス研究調査:ロサンゼルス全日系博物館での情報・史料調査、ロサンゼルス合同教会にて1940年代の日系人の教育活動に関わった女性宣教師に関する情報・史料調査、ロサンゼルスセンテナリー合同メソジスト教会にて研究報告(2022年8月21日「日本におけるアメリカ・プロテスタント系女性宣教師 による幼児教育活動『キリスト教保育』」)及び史料調査、PasadenaMonte(Vista Grove Homes)にて情報収集(宣教師の教育・文化活動に関する歴史史料の調査)を行った。また、戦後初期の「米国南メソジスト監督教会」関連資料、及び日本人保育者の米国留学に関する資料の所蔵先について確認した。 2022年9月12日関西学院聖和短期大学キリスト教教育・保育研究センタ-史料調査:戦前から戦後の日本における教育活動に携わった女性宣教師アン・ピービーに関する情報・史料調査及び当時の日本人保育者の留学記録等に関する情報収集を行った。また、金城学院、西南女学院の史料確認により日本人の保育者養成課程の検討に発展した。 以上、これらの情報整理と史料分析により、日本人保育者の教育実践に関しては「立花富と南信子の保護者へのお便りに見る保育観の考察」(江戸川大学(33号)2023年3月)、女性宣教師の教育活動については「パンデミックにおけるキリスト教保育の果たした役割 ―1920年代前後のJ.K.U.の活動の継続性に関する考察を中心に―」(キリスト教と文化(21)2023年3月)等他を公表した。 研究経費は、海外・国内調査費用、情報・史料データ管理機器(iPad Air)等で支出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度では、海外調査と国内調査が計画通りに進展した点、また未調査となった点がある。 米国ロサンゼルス研究調査では、ロサンゼルス全日系博物館・ロサンゼルス合同教会、センテナリー合同メソジスト教会等の情報・史料調査から、女性宣教師の戦前・戦後の教育活動の特性と継続性及び女性宣教師に学んだ日本人保育者の教育実践の継承に関する一考察を行うことに発展したが、調査については、米国調査(イリノイ大学、シカゴ大学等)が残っているため、翌年度夏期に計画している。なお、新たな史料所蔵先としてロサンゼルス(UCLA図書館)調査をも視野に入れて検討が必要である。また、国内調査においても「広島女学院」「関西学院」「北陸学院」での史料確認が必要とされるため、翌年度秋期に計画し各史料館等に了承を得ている。 しかしながら、2022年度は、海外・国内調査より、重要な情報と史料を確認すると共に、戦後初期の「米国南メソジスト監督教会」関連資料、及び日本人保育者の米国留学に関する資料の所蔵先情報を得ることができた。これにより、女性宣教師の戦時下における日系人収容所での一実態の情報収集に発展させることが期待できる。また、日本人保育者保育者の留学に関する検討、保育者養成課程の研究にも進展できると考えられる。つまり、今年度の調査および分析・検討は、海外調査2回の計画が1回となったこと、国内史料館調査等が3回ほど残っていることが課題となったが、一定程度の進展ができたと共に、本研究から今後の研究課題に発展できると考えられる。 以上、2022年度は研究調査をほぼ達成し、本研究を一定程度進展させることができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度では、引き続き海外調査及び国内調査に取り組む。海外での直接史料閲覧および収集は、アメリカにおいて「米国長老教会歴史協会」「米国南メソジスト教会」のいずれかの史料収集、また女性宣教師の関連機関アーカイブ史料室(イリノイ大学・シカゴ大学、南カリフォルニア大学・UCLA等)での史料調査(期間10日間可能であれば2回)を、渡航を行う。その際、海外渡航費滞在費(交通費・宿泊費・日当1名:400千円×2回夏期・秋期)を支出する。費用が不足した場合は、所属機関個人研究費または外部助成金より補い支出する。また、国内の歴史資料館「広島女学院」「関西学院」等の史料調査と文献等による分析の検討を行う。海外・国内調査から得た情報・史料の分析より、女性宣教師の教育的活動の継続性及び戦後の教育改革へ影響について検討を行う。それと共に、日本人保育実践者の立花富らの教育実践における学びと一貫性に関する分析にも取り組む。国内の史料館での調査・資料収集調査期間を、5日間(神戸2日間40千円、広島3日間50千円)を予定し、そのための国内旅費(交通費・宿泊費・日当1名)を、個人研究費と外部資金より補い支出する。他、史料収集に関する消耗備品(65千円)を購入し、史料複写・保存及び、成果物発表の際に使用することとする。また、調査史料の整理・保管の作業を行い、新たな研究課題へと進展させる。その他、現地調査研究協力者の謝礼(2023年度分で20千円)を用意する。図書や資料の印刷及びその郵送代通信費(2023年分の20千円)も使用することを見据えて研究を進めることとする。 成果として、女性宣教師の教育活動の継続性及び教育改革の理念及びその影響に関する検討を行い、国際教育史学会等で公表し、日本における教育的意義と、世界の教育史から見る歴史的意義についての考察へと発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の海外調査2回の計画が1回の実施となったため2023年度に海外調査1回分の使用額が生じたこと、また国内史料館調査3回分を次年度に行うための使用額が生じたことにより、2023年度は海外渡航による調査及び国内調査を行い、最終的な史料収集と情報確認を得て、研究成果を公表することとした。
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