研究課題/領域番号 |
21K02276
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
松本 和寿 筑紫女学園大学, 人間科学部, 教授 (50613824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育評価 / 戦後教育改革 / 経験主義教育 |
研究実績の概要 |
戦後教育改革における経験主義教育の先導的実践は、師範附属小学校や文部省指定の実験学校などに見ることができる。しかし、そうした実践がある一方で、「這い回る経験主義」、「ごっこ社会科」との揶揄や「学力低下」批判の高まりが示すとおり、俯瞰してみれば戦後日本における経験主義教育が停滞したことは周知のとおりである。こうした事態を解消するため、教育目標の明確化とその定着を測る客観的な評価が必要とされた。授業の効果を把握せずして日々の指導改善は望めないからである。指導と評価を一連のものとするこの取組は「教育評価」と呼ばれ、教育現場にその実施が求められていく。 本研究は、1920年代のアメリカにおいて「教育測定」運動へのアンチテーゼとして生まれた「教育評価」の概念が、戦後教育改革期の日本でどのように受容され、展開されていくのかについて明らかにすることを目的としている。 これまでの研究実績については、後述する進捗状況のとおり、コロナ禍による史資料収集の制限を受けたため、当初の目論見とは異なり、すでに集めた史資料や遠隔サービスで提供を受けた史資料の分析を行っている。また、その内容に前回の科研(基盤研究C18K02378)で得た本研究の基礎となる知見を踏まえ、研究計画に示した「小見山栄一の言う『教育測定の正しい限界の認識』の意味」「知能と学力の関係性に関する言説」「教育課程の系統化と評価観の関連」などについて検討した。 ただし、史資料の入手が遅れている戦後日本における欧米の「教育測定」研究の受容や、学校での活用状況、戦後の「教育測定」研究との関連などについては、十分な成果をあげるには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の採択から約1年半、コロナ禍により調査研究(史資料の収集を目的とした出張)が制限を受けたため、手持ちの史資料や国立国会図書館の遠隔複写サービスを利用した検討が中心となった。そのため、年次計画で立てていた研究計画を見直し、手持ちの史資料等による検討が可能な内容から順次検討を始めた。研究2年次の後半からは調査研究のための出張の制限もなくなり、当初の目論見よりもやや遅れているものの目的とする史資料を収集できている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗が遅れている戦後日本における欧米の「教育測定」研究の受容や学校での活用状況、戦後の「教育測定」研究との関連などの検討のため、史資料の収集先を国立国会図書館だけでなく、国立教育政策研究所や大学等の研究機関に広げる。また、調査に赴く機会を増やすとともに、デジタル資料等の提供サービスを有効に活用していく。 本研究の対象時期は戦後教育改革期であるが、研究の目的の達成には、授業と評価に関する戦前と戦後の連続や非連続に関する検討も必要であるため、大正期以降の戦前の史資料をできる限り収集したい。 また、これまで助成を受けた(基盤研究C15K04272)と(基盤研究C18K02378)の成果と本研究を積極的につなぎ、戦後教育改革期の授業と評価について重層的な研究となるよう推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の中断はないが、コロナ禍による研究期間の約半分に及ぶ調査研究(出張)の制限のため旅費の支出がなかった。令和5年度以降は必要な支出を行う予定である。 なお、研究課題に関連する情報の収集のため関係学会への参加や研究者訪問等を積極的に実施したい。また、古書等の史料の発掘と購入も計画しているが、希少度に応じてその保存を期すため、史料のデータ化を行うことも計画している。
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