令和3年度までに実施してきた文献調査やオンラインを通しての調査内容を精査したうえで、令和4年度は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州(以下BC州)における包摂性にも着目し、学びと雇用の柔軟な接続方法について調査を進めた。 BC州が世界各国から受け入れている留学生や移民の個々人が持つ文化や学びや価値観を尊重し、多様性を十分に発揮しやすい社会を構築していくための教育政策や周辺の支援策を明らかにした。BC州内の各地域に設置されている公立カレッジは、地域の高校生の高等教育への接続や、留学生や移民の言語習得のプログラムの提供や、成人のキャリア形成やシニアの学び直しに至るまで住民の生涯にわたり学習支援を行っている。令和4年度はBC州内のカレッジを訪問調査を行い、各カレッジと大学のコースや科目のレベルを保証するための州内の仕組みも構築され、学修歴を活かして個々人の目標に沿った学びを可能にしている現状を確認し、BC州内で公立カレッジが設置された歴史や州内の居住地にとらわれない学ぶ機会と教育の質保証を維持するための制度設計を明らかにし各学会の発表を通し研究成果を公開した。 本研究全体を通して、BC州に着目して多様な文化や学びの背景を持つ人々が互いの能力を十分に発揮しながら学び、働くことを可能にしていくための教育システムの在り方を明らかにし日本との比較研究を進め、多様な学修歴とキャリア形成の接続を可能にしている支援内容を明らかにした。 今後の日本においても多様な文化や価値観、学修歴を持つ留学生や外国人人材の受入後の定着のための支援と、個々人のキャリア形成の充実に向けた学び直しの支援の充実も一層求められる。これらの点において先進的なBC州の教育制度と周辺のシステムの取組みを明らかにし、日本の制度との比較を通して新たな視座を示すことができた点において本研究の意義は大きいといえる。
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