研究課題/領域番号 |
21K02282
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
古田 和久 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70571264)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 教育機会の不平等 / 格差のメカニズム / 貸与奨学金 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,(1)出身階層による教育機会の不平等,(2)教育と到達階層との関係,の両者を明示的に統合し,教育を通じた社会の階層化メカニズムを検討することであった。 (1)については,教育機会の格差の実態とメカニズムを,拡充した貸与奨学金の役割を加味した分析を行った。各国の高等教育の拡大は貸与奨学金など私費負担の増加を伴って進められているが,この状況における,高等教育進学格差のメカニズムを検討した。具体的には,複数の社会階層指標が,高等教育進学および貸与奨学金利用の双方にどのように影響するかを,学生とその母親を対象とした縦断調査(「高校生と母親調査,2012」およびその追跡調査)により検証した。その結果,第1に親の教育,世帯収入,貯蓄が独立して高等教育機関への進学に影響すること,第2に親の教育と経済的資源は,高い親の教育が経済的資源の影響を緩和するという相互作用を持つこと,第3に異なる資源の間の補償は貸与奨学金の利用によって行われることが示された。 次に,(2)に関係するものとして,貸与奨学金の負債が個人のライフコースに短期,長期の影響を及ぼす可能性があることに鑑み,若年層の借金に着目し,高等教育在学時の貸与奨学金利用の有無とその金額について,出身階層などとの関連を検討した。「高校生と母親調査,2012」の追跡調査を分析した結果,出身家庭の経済的要因との関係が強く,経済的資源が少ない家庭の出身者ほど奨学金を利用していること,進学先機関によって利用傾向が異なることなどが分かった。さらに,高等教育進学に関する意識も奨学金利用と関係していることが明らかとなり,貸与奨学金利用のメカニズムの一端が示された。 これらの結果をもとに,学会等での報告を行うとともに論文の執筆,発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学会等での報告やそれを踏まえた論文執筆・発表などを行っているものの,学内業務の急な増加に対応したことにより,研究の遂行に支障が生じた時期があったため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで,「高校生と母親調査,2012」およびその追跡調査を用い,1つのコーホートの動向について検討を行ってきた。今後は,利用できる他のデータの分析にも着手し,コーホートの比較などを行うことにより,社会構造の変化にも着目する。研究成果については学会や研究会で報告し,論文の執筆を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定額との差額が生じたのは,新型コロナウイルスの感染拡大により出張ができなかったこと,学内業務の急な増加に対応し,研究の遂行に支障が生じた時期があったためである。次年度は予定していた物品や文献の購入,英文校正および論文の出版,学会への参加などのために,研究費を使用する予定である。
|