研究課題/領域番号 |
21K02290
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
高橋 朋子 近畿大学, グローバルエデュケーションセンター, 教授 (30635165)
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研究分担者 |
中谷 潤子 大阪産業大学, 国際学部, 教授 (20609614)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移民二世代 / 進路形成 / キャリア形成 / 中国ルーツの子どもたち / 日本語教育 / 学齢を超過した第二世代の生徒 |
研究実績の概要 |
研究活動は以下のとおり実施した。1つ目は、インタビュー調査である。これまでに行なってきた中国人から範囲を広げ、フィリピン人、ネパール人の第二世代の高校進学とキャリア形成に焦点を当てたインタビューを実施した。いずれもサポートを受けられなかった学校生活の経験から、自らが次世代の通訳やサポーターになる使命を自覚していることが明らかになった。一方、夜間中学などで中卒の資格を獲得し、高校進学した外国人生徒の多くが退学していることも明らかになり、日本社会における移民第二世代の支援は単発的で、その生徒の人生を包括的に捉える視点が抜け落ちていることもわかった。これは持続可能なサポートシステムの確立に向けた大きな課題と言える。 2つめとして、以上のデータや考察をもとにした、アメリカでの学会発表および、論文投稿と書籍への執筆が挙げられる。アメリカの学会では、Chaimanとして5名の研究者(うち1名は、本研究分担者の中谷氏)とともにパネルディスカッションをオーガナイズした。高橋のテーマは、Inheritance and Transformation of Culture and Language in Chinese Overseas COmmunities in Asia 、中谷氏のテーマは、Transforamtion of Inheritance of Chinese Indonesian Language and Culture である。高橋は、移民第二世の教育達成を分岐する要因についてこれまでのデータ分析をもとにした考察を、中谷はインドネシアにおける第二世代の文化と言語の継承についてインタビューをもとにした考察をそれぞれ行った。他のパネリストは、民族学校である中華学校の教師の変容と継承、エスニックコミュニティに存在する行事の中の文化継承について報告を行い、活発で意義のある討論を行うことができた。またアカデミックな場での発表以外にも、二世代の教育達成を考える指針として、小中学校、市教育委員会へのワークショップや研修会など啓発活動を活発に行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、より多くのインタビュー調査をし、データ収集を積極的に行う予定をしていた。しかし、コロナ禍であったため、対面によるインタビューや学校訪問などに制限があり、なかなか順調に進んだとは言い難い。中国帰国者の多くは、集団で公営団地に住んでおり、インタビュー場所に通っている学校を指定してくることが多かった。しかし、小中学校では外部からの立ち入りに制限を設けていたため、交渉やスケジュール調整など実施まで困難が多かった。 また、コロナ禍を受けて就業状況が不安定になり、インタビューどころではないという協力者もおり、想定外のキャンセルもあった。次年度はより丁寧で安心してインタビューできる状況を整えたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、大きく分けて以下の2つの研究活動を行う。 1つ目は、データ収集と考察である。上述した協力者も含め、安心してインタビューができる状況を整えたい。また、これまでは中国ルーツおよびフィリピンルーツの第二世代に焦点を当てていたが、他の国籍についても考慮していく予定である。 2つ目は、海外調査である。特に、移民第二世代、1.5世代が活躍するアメリカでインタビュー調査を実施する。移民を受け入れる背景や編入システムは異なるが、成功を分ける要因に共通性はあるのか、差異があるとすればそれを日本はどのように受け入れていくべきかについて考察を行う。それを学会や学会誌に発表する準備を行う。 総括に向けてデータ収集、整理、考察、発信をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由には2つ考えられる。1つは調査に関する費用である。コロナ禍により、対面でのインタビューが難しく、インタビューの承諾が得られたにもかかわらずインタビューが実施できなかった。そのため、インタビューにかかる謝金や交通費、場所代などが発生しなかった。また、ネパール人の高校生へのインタビューは、保護者の同意が必要であり、ネパール語に翻訳された同意書を準備する予定であったが、保護者の日本語能力が高かったため、不要となった。 2つ目の理由は、国内外を問わず、移民などに関する研究会、学会、ワークショップ、シンポジウムのほとんどがオンライン開催、またはハイブリッド開催に変更されたことにより、交通費や参加費、宿泊費が発生しなかったことによる。 次年度は、①学会が対面開催となったため、学会参加による旅費、参加費に使用する(2023年9月オーストラリアでの教育学会(すでにアクセプト済)、10月の華人華僑学会への参加予定)②より多くのインタビュー協力者への謝金に充てる。
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