研究課題/領域番号 |
21K02292
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研究機関 | 平安女学院大学 |
研究代表者 |
新谷 龍太朗 平安女学院大学, 子ども教育学部, 准教授 (10783003)
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研究分担者 |
相楽 典子 平安女学院大学, 子ども教育学部, 助教 (30709366)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スマートスタート / ホームスタート / 支援対象児童等見守り強化事業 / アウトリーチ / 同和保育 |
研究実績の概要 |
本研究では、最初の一年はスマートスタートに関する予備調査及び、日本での現地調査を行う予定であった。 一つ目の研究課題である「米国でのスマートスタートの取り組みの実態把握」については、「ヘッドスタートを補完するスマートスタートの取り組み-米国ノースカロライナ州の幼児教育・保育から」(2021,『平安女学院大学研究年報』第22号,pp.36-46)として予備調査を行うための理論的整理を行なった。また、就学前介入の効果を研究したことで有名なアベセダリアン・プロジェクトの実施を担ったフランク・ポーター・グラハム研究所の主催する研究会や、全米幼児教育協会の年次大会にオンライン参加し、新型コロナ禍での保育の状況に関する情報収集を行うとともに、現地調査先の候補選定を行なった。 二つ目の研究課題である「日本での就学前支援の実態把握」については、新型コロナ禍でのアウトリーチに着目し、ホームスタートや厚生労働省の「支援対象児童等見守り強化事業」の業務委託を受ける法人への聞き取り調査などを行い、包括的な子育て支援の枠組みとその課題について調査を行なった。調査結果は次年度の研究紀要等で公表を予定している。なお、日本での子育てアウトリーチや地域との協働による子育て支援の先駆的取り組みであった同和保育の歴史について整理した(「就学前からの学力保障と同和保育-教育コミュニティづくりに向けて」『保育研究』第52号,pp.18-25)。 三つ目の研究課題である「日米比較を通じた就学前の包括的支援の在り方」については、現在参画している日本での非営利組織を中心として行われた子育て支援アウトリーチの取り組みを軸として、米国のスマートスタートとの比較をもとに発表を行うため、同取り組みの研修会・報告会・理事会に参画し、アクションリサーチを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画においては、非営利組織を中心とした、コミュニティの社会資源をつなぐ包括的な就学前支援の取り組みを明らかにするため、スマートスタートの本部でのインタビュー調査や、スマートスタートの地方支部での実際の取り組みを観察し、どのような予算配分や意思決定がされているのか、それらがどのような制度的枠組みで行われているのかを明らかにする予定であった。特に、スマートスタートの特徴である地域ネットワークの構築について調査し、コミュニティにおける様々な社会資源をどのようにつないでいるのか、具体的にどのような取り組みとして展開されているのか、利用者はこれら取り組みをどのように評価しているのかを現地調査で明らかにする予定であったが、新型コロナ禍の中で現地での活動も制限されており、かつ渡航しての現地調査が難しい状況である。そのため、オンラインを用いた予備調査を並行して進める予定である。 一方で、日本のアクション・リサーチについては、新型コロナ禍の中で子育て支援アウトリーチの必要性が高まったことから、ホームスタートや支援対象児童等見守り強化事業に着目した調査を行なったことで、アウトリーチを軸とした包括的支援の枠組みの構想が見えてきた。これらのことから、米国での現地調査については予定通りに進まない点があるにせよ、日本での調査では当初の予定よりも順調に進展していることから、上記区分の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
スマートスタートの現地調査に向けて準備を進める。そのため、スマートスタート本部へのアプローチを行うとともに、各支部での取り組みに関する情報を収集し、オンラインでの聞き取りを含めた調査を実施する。 また、日本国内に置いても、官民問わず、地域ネットワークを構築することにより子育て支援、就学前支援に取り組むコミュニティについて調査し、どのような予算や人的資源を必要とするのか、具体的にどのような取り組みを行い、その取り組みを展開する上でどのような制度的課題などが存在するのかを明らかにする。 これら知見を踏まえて、現在参画している非営利組織を中心として社会的包摂をテーマとするプロジェクトでのアクションリサーチを継続し、特に、障害者支援施設、青少年センター、医療機関、企業などをつなぐネットワークを生かした取り組みにつなぐ実践モデルとそのプロセスを明らかにする。その際、どのような課題があったのか、それを克服するためにどのようなことが必要であったのかに着目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた現地調査が新型コロナ禍のため実施できなかったため。
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