研究課題/領域番号 |
21K02311
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
白井 章詞 長崎大学, キャリアセンター, 准教授 (90615262)
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研究分担者 |
児美川 孝一郎 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (50287835)
小田部 貴子 九州産業大学, 基礎教育センター, 講師 (80567389)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キャリア / 高卒就職 / 地方 / キャリア形成 / 社会的包摂 |
研究実績の概要 |
研究最終年度は、県内企業14社を対象に高卒者の採用と育成についてインタビュー調査を実施した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、以下の通りである。 ①県外大学へ進学した大学生21名を対象とした調査からは、希望する職業や職種が地元には無いことから流出したことが明らかになった。②一方、地方の金融機関に就職した大卒者への調査からは、職業ビジョンが曖昧であっても基礎学力があれば就職できてしまう環境にあった。そのため、社会的には安定した仕事についていると思われがちだが、個人的には不安定な心境にあり、些細な躓きによって離職しかねない者もいた。しかし、地方には、他に恵まれた労働条件にある企業が少ないことから、将来に対する閉塞感を抱いていた。③地方の民間企業に事務職として就職した高卒女性に着目した研究では、彼女らが頻繁な人事異動を経験しながら、職業キャリアを形成していたことを明らかにした。特に、人事異動のたびに必要とされた「学び」から「学びの型」や「学び習慣」を身につけたことが、どこへ配属されても仕事は学べば「やっていける」との認識につながっていた。これは、人事異動という仕組みを有する日本企業で働き続けるうえで、重要な能力だといえる。④高卒採用を行っている企業を対象とした調査の結果、得られた知見は以下の5点であった。第一に、入社試験では実質的な選抜が行われていなかった。第二、企業は高卒者を将来のリーダーや管理職候補として捉えていた。製造職や福祉職では、現場のスペシャリストになる道も開かれていた。第三に、企業は入職者の早期離職に危機感を持っており、14社中5社は入社後3年以内の離職率が10%以下にあった。こうした企業の採用と育成方針は、地方に滞留する高校生の社会参加と自立に大きく寄与するものであり、社会的包摂としてみることができた。
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