研究実績の概要 |
研究テーマは、出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status, 以下、SES)や地域といった子供自身が選ぶことのできない初期条件である「生まれ」によって学力や最終学歴といった教育成果に差がある「教育格差」を、大規模データの二次分析を通して実証的に明らかにすることである。これまでの教育格差研究を踏まえて、2021年度は、出身家庭のSESによる有利・不利がどのように機会の多寡と結果の差異に繋がるのか、特にコロナ禍という文脈を踏まえ、そのメカニズムを様々な観点から実証的に検討した。 2021年度は、文部科学省の委託研究として2020年度に実施された大規模抽出調査の個票データの分析を行った。調査の対象は全国の小学校5年生と中学校2年生の児童生徒と保護者、学校、それに教育委員会であり、2020年の1~3月に行われた。小学校5年生と中学校2年生の保護者のデータを分析したところ、SESの代理指標である親の大卒者数が多い層ほど、「意図的養育」として解釈できる子育て実践を行っていた。また、98%の児童が公立校に通う小学校であっても、SESによって居住地域に偏りがあるため、学校間格差があった。両親大卒の親の割合が高い学校では、大半の子供が学校閉鎖期間に「意図的養育」を受けていたことになる。 新型コロナ禍の前から学校SES(通っている子供の出身家庭のSESの学校平均)による様々な差があったが、学校閉鎖期間があったことで、低SES校における対面授業再開後の教育はより困難になった可能性がある。学校閉鎖期間に「意図的養育」を受けていない子供たちが大半の低SES校では、限られた授業時間の中で基礎の復習から行う必要があったと考えられる。
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