研究課題/領域番号 |
21K02349
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研究機関 | 関西福祉大学 |
研究代表者 |
菊原 美緒 関西福祉大学, 看護学部, 准教授 (80761915)
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研究分担者 |
川口 裕之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 腫瘍化学療法部, 准教授 (00313130) [辞退]
清住 哲郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 救急部, 教授 (80818617)
笹 秀典 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 産科婦人科学, 准教授 (70531200)
高橋 知久 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 精神科学, 助教 (40828729) [辞退]
田仲 浩平 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (60449949)
米満 潔 佐賀大学, 全学教育機構, 特任講師 (80301670)
内野 小百合 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, その他, 准教授 (90758757) [辞退]
宇治田 さおり 福岡国際医療福祉大学, 看護学部, 助教 (40881131)
鈴木 智恵子 佐賀大学, 医学部, 教授 (20569636)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | こども虐待 / CPT / XR / VR / AI |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、こども虐待の予防にあたる行政職員・医療従事者に対する仮想空間技術(以下XR) を活用した教育プログラムの開発である。まず、こども虐待について、CPTの全体像を報告する。A大学病院子どもの安全委員会の活動は、2012年8月第1回こどもの虐待対応委員会(CAPS)開催、2013年3月こどもの虐待対応委員会(CAPS) の第1回の報告、2016年3月「こども安全委員会(CPT)」に改称された。2016年5月登録事例が100件を超え、2018年5月200件を超えた。2013年から2022年までに延べ約356件が報告された。そのうち、妊婦事例は248件、こども虐待(疑)事例は105件、事例検討会はのべ192回の開催であった。 その特徴は、特定妊婦など養育能力の不足などが懸念される妊婦の報告が多く、まだ虐待を受けるかもしれない児は出生しておらず、虐待は未遂の状態である。その内、精神疾患合併妊婦の割合は2020年71%、2021年56%、2022年67%と半数を超えていた。事例検討会には、病院の関連各科(小児科・産婦人科・精神科・法医学など)とともに、保健センター、市役所担当部署、児童相談所、他医療機関、警察、学校、幼稚園・保育園、訪問看護ステーション、ファミリーセンターなどの関係機関を招致した。そこでは情報が錯綜している場合の整理と共有や、リスクの高い事例に対する方針の調整を行った。事例検討会の開催率は2017年96%のピークを境に2020年4月7日の緊急事態宣言後の出産数の減少もあり、2022年には16%となった。新型コロナウィルス流行下の虐待は親の経済的困窮(就業時間の短縮による収入の減少・女性の失職)や普段不在の親(特に父親)の存在、隔離や社会的な不安のストレスなどが考えられた。 また、これらの調査と並行しXR教材の開発を試行し、これらの可能性を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主任研究者は、所属機関を退職し、他研究機関に異動した。異動に伴う手続きなどもあり、また、新型コロナウィルス感染症のソーシャルディスタンスで中断されていた学会や研修会も多くあったため、本研究課題の進捗はやや遅れている。新型コロナウィルス感染症が5類に移行した後は、子ども虐待予防や、XRに関する学会や研究会に積極的に参加した。そこでは、より専門的な子ども虐待予防やCPTについての知見を拡げることができた。特に、BEAMS研修Ⅰ~Ⅲでは、CPTのロールプレイを実施し、支援者の心理的葛藤や負担を体験した。さらにファシリテーターや参加者とともに事例のアセスメントや子どもの命を守る支援の適切性についてのディスカッションを重ね、学びを深化させた。その後もともに学んだ仲間と情報を共有し続けている。このような子ども虐待に関する学会や研究会での知見と実際の具体的なCPTの症例を関連させた効果的なシナリオによる教材のモデルの作成を急いでいる。 一方で、XR教材開発は、コロナ禍の中で作成した看護教育のVR教材の成果について、緊急事態宣言解除後は積極的に学会などで発表した。例えば、子ども目線の一人称体験ができるVR教材や小児看護学の授業で用いたVR教材の実践を世界家族看護学会、日本看護科学学会でポスター発表した。また、「360度動画を活用した子どもの患者体験(一人称体験)の教育効果」(看護人間工学学会2023.VOL.5)は論文にして発信した。このような活動による質疑応答や研究者や実践者の意見も参考にして、現在、分担研究者とともに、XRを活用した子ども虐待予教育プログラムの開発を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
分担研究者とともに、病院受診の場面における実写版360度動画による教材を作成中である。子どもや保護者、病院スタッフなどの対応について演劇を取り入れ、子ども虐待が疑われる受診の場面を撮影する。その動画を視聴することで、アセスメントや、子どもの安全を最優先にした関わりについて学ぶことができるようにする。動画に用いるシナリオは、A大学病院CPT事例検討会の内容だけでなく、子ども虐待に関わる職員とのケース会議で抽出された内容やBEAMS研修などで学んだ内容も盛り込み、教材の精度を高めていく。また、家庭訪問場面におけるやり取りは、アバターによるVR教材を作成中である。ここでは、AIを活用した支援者の心理的葛藤を教材に取り入れる。今後も月1回程度の定例研究会を設け、子ども虐待事例の訪問場面での観察やアセスメント、支援者の心理的葛藤への対処などを想定した教材を作成し、これらの教材を評価しながらシナリオを検討し、モデルを構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後、撮影する360度動画の経費が必要となる。データー管理や編集についての経費が必要である。また、分担研究者と研究ミーティングを行ったり、学会発表に関する費用も生じる予定である。分担研究者と連絡を密にしながら進めていく必要がある。アバターを活用したモデルでは、研究ミーティングの際の交通費などが必要である。また、作成した教材についてはパイロットスタディを行い、評価し修正を加えていく予定である。
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