研究課題/領域番号 |
21K02355
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
片岡 元子 香川大学, 教育学部, 教授 (40709242)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 探究型研修 / ミドルリーダー / 研究的実践者 / 実践の交流 / 実践の記録 |
研究実績の概要 |
「探究型研修」の有効性を検討してきたM町にて明らかになった課題に対応するため、研修参加者がより主体的に参画できる研修計画の作成・実施に取り組んだ。その結果、研修参加者同士の交流の機会を増やし、互いに学び合う雰囲気を醸成することが、研修参加者の前向きな取り組みにつながることがわかった。 一方、これまでのミドルリーダー研修会の課題やM町での検討を踏まえ、A県・B市において、年間3回の「探究型ミドルリーダー研修(園外研修)」を実施した。第1回研修開始前と第3回研修終了後に、研修参加者へのアンケート調査を実施したところ、研修参加者は、他園からの参加者と話し合う機会を楽しみにするなど学びたい気持ちは強いが、同時に、研修参加や中堅保育者としての自分自身への不安感が大きいことが分かった。 そこで、M町での取り組みでの知見も生かし、研修参加者同士の交流の時間を十分に取り、他市町の実践者との交流から、自身の実践の構想がもてるように研修計画を作成した。あわせて、研修参加者が、自身の取り組みに対する手応えや充実感を感じることができるように、負担が大きくなることを見据えたうえで、「実践を書く」ことを課した。その結果、第3回終了後には、回答者のすべてが、研修参加に対して肯定的に回答し、自身の成長や充実感を味わっていることが見出された。 以上のことより、「探究型ミドルリーダー研修(園外研修)」において、“実践の記録”が、自身の実践を語りたいという気持ちを生み、“実践の交流”が、ミドルリーダーとしての役割や自身の在り方について考えるきっかけになる可能性が示唆された。 さらに、C園において、各保育者が探究の場を設定し実践を行う「探究型園内研修」を継続することにより、各保育者が自分なりの視点でアクションリサーチを進め、実践を記録するとともに、その過程を互いに面白がって学び合う園内研修につながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度、依然として新型コロナウイルスの感染拡大は継続していたが、感染対策の徹底やオンラインでの実施等により、A県とB市において3回ずつの「探究型ミドルリーダー研修(園外研修)」及び、研修参加者へのアンケート調査を実施することができ、研修計画における“実践の記録”や“実践の交流”の重要性を導くことができた。 また、C園における「探究型園内研修」では、2年目の実践であるため、探究テーマの設定や交流の方法について見直し、より研究的実践者としての成長をねらう取り組みに改善することができた。 ただし、「探究型園外研修」への参加者の園において「探究型園内研修」の実施を試みること、つまり、園内での各保育者の探究的な取り組みが園外での探究型の研修とリンクする往還型の研修については実践することができなかった。その実施の価値も含めて、今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
A県及びB市において、「探究型ミドルリーダー研修(園外研修)」を継続する。その際、2021年度の取り組みの成果として、“実践の記録”と“実践の交流”が研修参加者の主体的な姿を引き出すことが示唆されたため、“実践の記録”と“実践の交流”に着目して、アンケート調査を実施していきたいと考えている。 先行して研究を進めてきたM町では、自治体の研修担当者との協議の上、町のミドルリーダーの育成に焦点を当てた研修に戻していく予定である。その中でも、 “実践の記録”と“実践の交流”の果たす役割について探っていくことが、研究推進に示唆を与えると考えている。 当初、園内外での「探究型研修」をリンクさせ、両者の学びが相乗的に高まることを検討する研究計画を作成したため、A県での取り組みをB市に発信する役割を担うB市の研修リーダーの園での「探究型園内研修」の実施を探ってきた。しかし、ここまでの実践において、「探究型園内研修」での取り組みと「探究型園外研修」での取り組みを互いにつないでいくためには、研修参加者の園における強いリーダー的役割が不可欠であり、現段階でその実施は難しいと考える。そのため、A県・B市においては、引き続き「探究型ミドルリーダー研修(園外研修)」、C幼稚園において、「探究型園内研修」の実践を継続する。その中で、ともに“実践の記録”と“実践の交流”に着目して研究を進めていきたい。 C幼稚園での実践は3年目となり、園のミドルリーダーにあたる職員が探究のテーマや研修の進め方について主体的に考え、園内での協働的な取り組みとなるよう支援していきたいと考えている。各保育者の探究的な取り組みが促される「探究型園内研修」の実施により、保育にやりがいや手応えを感じ、研究的実践者としての意識の向上を図っていきたいと考える。その先進事例を、他園の園内研修にも発信していく方法について検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の中ではあったが、対面型の集合研修の実施回数も増え、研究に使用する機器等の購入のための物品費については支出した。一方で、学会等は依然としてオンラインにて開催されたため、旅費の支出は0円であった。 2023年度は、コロナウイルス感染症の位置づけも変わり、当初の計画通りに研修会を開催し、アンケート調査やインタビュー調査のデータの取りまとめを行う予定である。人件費・謝金等の支払いも必要となる。
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備考 |
自治体の研修担当者及びミドルリーダー研修への参加者に配布するために、報告書「ミドルリーダーの育成をめざす『探究型研修』の試行」(令和5年2月)を作成した。 C幼稚園での実践を「『探究型園内研修』の検討-園内環境の再考をテーマして-」としてとりまとめ、香川大学教育学部「学部・附属学校園教員合同研究集会」要旨集録の原稿とした。
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