研究実績の概要 |
本研究は,自閉スペクトラム症に関連する感覚情報処理の個人差と言語・社会性発達との関連を検討することを目的としている。2021年度は,以下の2点を実施した。
1. 感覚情報処理の個人差を検討するために使用する予定の質問紙であるSensory Profile(Dunn, 1999)の日本語版感覚プロファイル(辻井, 2015)を用いて,大学生を対象に感覚情報処理の個人差と,大学生活に対する不安および対人不安との関連を検討した。大学生活における適応度は大学生活不安尺度(藤井, 1998)によって評価を行った。また,対人不安の個人差はInteraction and Audience Anxiousness Scale (Leary, 1983)の日本語版 (岡林・生和, 1991)を用いて評価した。相関分析の結果, 感覚プロファイルの3象限(低登録, 感覚過敏,感覚回避)のスコアは,大学生活不安および対人不安と有意なポジティブな相関を示した。感覚プロファイルの「感覚探求」象限のみ大学生活不安および対人不安と有意なネガティブな相関を示した。また, 共分散構造分析の結果,感覚プロファイルの低登録と大学生活不安について有意なポジティブな直接効果, 感覚探求と大学生活不安に有意なネガティブな直接効果が示された。さらに, 感覚プロファイルの各象限から, 対人不安を媒介し, 大学生活への適応度に影響する間接効果を検討したところ, 感覚プロファイルの感覚過敏において有意な間接効果が得られた。よって,感覚過敏特性は対人不安を媒介して大学生活不安を上昇させることが示唆された。これらの結果から,大学生において感覚情報処理の個人差は対人不安や大学生活への適応度と関連することが示唆された。 2. 乳児を対象とした対面およびオンライン調査を行うための倫理申請を行い,オンライン調査用のwebページの作成を行った。
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