研究成果の概要 |
非血縁の乳児や乳児人形を抱っこすることによるオキシトシンおよびコルチゾールの変動に焦点を当て,その心身相関を探求した。研究結果は,乳児と乳児人形の抱っこにおいて,オキシトシンとコルチゾールの変動が異なる傾向を示した。乳児を抱っこすることでオキシトシンの分泌が維持され,コルチゾールの分泌が抑えられる一方,乳児人形を抱っこすることがオキシトシンの分泌低下に関与し,コルチゾールの分泌に正の影響を与えることが明らかとなった。これらの結果は,乳児との身体接触が感情形成にどのような役割を果たすかを理解する上で重要な示唆を提供し,抱っこが心理的・生理学的な側面でもたらす影響について理解を深める一助となる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究結果から,非血縁の乳児との抱っこを通した相互交流によって青年のストレスが抑えられ,愛情や絆形成が維持される可能性がある一方で,乳児人形を抱っこする場合はストレスを増加させることが示された。以上から,育児経験の無い青年に向けて,抱っこを介した乳児との交流機会を設けることは, 近い将来親となるための準備性を高めるだけでなく, 対人関係能力を向上させ, 青年自身の健康の維持にも役立つ可能性がある。青年自身が生活するコミュニティでこのような取り組みができれば,地域社会全体の育児支援体制の強化に貢献でき,その体験を通して青年自身の自己効力感と生涯発達へもポジティブな影響をもたらす可能性がある。
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