研究課題/領域番号 |
21K02376
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
青木 哲 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80321438)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | COVID-19 / コロナ / 保育室 / 二酸化炭素 / 温湿度 / 換気 / 空気清浄機 / 保育園 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度の1~3月に実施した北信越地方(新潟、長野、富山、石川、福井)での保育室の実測調査データの分析を中心に行った。実測調査は、計11園25室で行っており、測定項目は東海地方での調査と同様の二酸化炭素濃度、温度、相対湿度であった。分析対象とする測定データは、休園日を除き、各園の登園から降園までの時間を考慮して抽出したものを利用した。 二酸化炭素濃度は厚生労働省によって良好な換気状態とされる1000ppm以下に、約83%の測定日が該当していた。次に、換気の程度を検討するため、期間中を定常とみなしてザイデル式を用いた推定換気量と必要換気量を算出した。推定換気量は、25室中23室で必要換気量を上回っており、新型コロナ対策における換気の実施によって、保育室の空気環境は良好に保たれていると考えられた。その一方で、東海地方と同様に過剰な換気が行われている可能性が推察された。そこで、温度、相対湿度について学校環境衛生基準との比較をしたところ、温度は約22%の測定日で、相対湿度は約36%の測定日で基準よりも低くなっており、換気による影響が考えられた。ただし、保育士の乾湿感との関係では、明確な影響がみられず、マスク着用によって乾燥感が緩和されている可能性が示唆された。 また、北信越地方で最も平均CO2濃度の高かった保育室で流体シミュレーションを行った。解析対象は2023年1~2月の平均日変化とし、1000ppmを超えており、子どもが全員在室している午睡時(13:00~15:00)2時間とした。なお、この施設では天井に機械換気設備(熱交換なし)が設置されていた。解析パターンとしては、外気側の窓開け位置や量の変更、廊下側の扉開けの変更などである。その結果、廊下側の開口部を開けることで、二酸化炭素濃度の低減かつ室温も保つことができる効果的な換気方法であると考えられた。 今後は地方別の相違・類似点を中心に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東海地方、北信越地方のアンケートおよび実測調査の対象園が概ね予定通りの母数となっている。またデータについても機器のトラブルなく収集できていた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和6年度には、令和3,4年度の東海地方・北信越地方で得られたデータの比較を中心に行う。 特に、東海地方及び北信越地方の冬季実測調査により得られたデータをもとに、暖房器具や換気設備・加湿機器の有無、窓の仕様、部屋容積、保育対象年齢・人数など様々な要素を用いて、地方別に各要素がCO2濃度及び温湿度データに与えた影響を回帰式の作成や有意差検定などにより明らかにしていく。さらに、CO2濃度や温度・相対湿度の基準値からはずれていた保育室を対象に、CFD解析を用いて開口面積や開口位置の変更によるCO2濃度、温度、湿度への影響も検討する。この解析結果をもとに、保育室や外気候の特性に配慮した良好な空気・温湿度環境の形成のための環境調整手法について、アンケート結果を交えて提案を試みていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予算申請額から大幅に減額された影響と、調査旅費や国際学会の大会参加費の支出が想定よりも高かったこともあり、CFD解析ソフト(シミュレーションソフトウェア)の年間ライセンスの更新がR5年度には不可となった。そのため、令和5年度と令和6年度の予算を合算して令和6年度には導入したい。
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