研究実績の概要 |
ヒトの二足直立歩行は,基礎科学的にも臨床医学的にも重要なテーマであるが,二足直立の獲得過程に関する運動力学的研究や適応の研究はない.力学的パラメータのない,動作だけの解析や理学所見の解析は古くからあるが,床反力計や圧分布などの力学的パラメータを含めた研究は,多くはなかった.申請者は,発達期の力学的研究として,四つ這いの動的接地力を初めて報告した(Yozu A, Gait Posture 2013).その後,寝返りの力学的研究も行い,多様な寝返りのパターンを記述した.これらの研究を発展させ,様々な運動パターンの力学的メカニズムを明らかにする.これにより,臨床医学的には,立ち上がったり,歩くことが困難な疾患や障害を抱える患者のためのリハビリテーションの開発につながる.例えば具体的には,有益な運動プログラムの開発に繋がる.力学的な根拠に基づき,運動の方向や量を決定できる.また,有益な義肢・装具の開発などにつながる.力学的な根拠に基づき,素材の選定や,パーツの形状を決定できる.従来より,義肢・装具の重さは問題とされてきているが,安定化の為に必要な重さと,運動阻害のための重さの選別などを行える.また,神経科学や人類学・進化学的などの基礎科学的には,ヒトの二足直立の運動モードとしての効率を明らかにすることにより,発達や進化のメカニズムの理解につながる.研究開始はコロナ禍であり,ヒトを対象とする計測は困難を極めている.とくに小児の研究はもともと計測に手間と人員が必要であり,密になりやすく,困難を極めている.代替として,感染対策を十分にとりながら成人の計測を進めてきている.また,代替として動物の計測も検討している.
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