研究課題/領域番号 |
21K02387
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 特別支援教育研究所, 客員研究員 (80326991)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / ナチュラルサポーター / 語用論的情報の活用 / 中枢統合の脆弱性 / 心情推測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,自閉スペクトラム症(ASD)児・者のコミュニケーションと関連の深い語用論的特性に対する実証的検討を行い,そのデータに基づいたナチュラルサポーターによる日常的支援モデルを構築し,その効果を検証することである。ナチュラルサポーターとは,養育者をはじめとする家族や保育者などの支援を必要とする人々と日常をともに過ごす人々である。 2023年度は,ASD特性の連続体上での語用論的情報活用の特徴とその関連要因を検討した前年度までの研究成果を日本発達心理学会に投稿し,『発達心理学研究』第34巻に掲載された。同時にこれらの研究成果を中心に,十文字学園女子大学特別支援教育研究所の公開講座「心理学研究からみえてきた自閉スペクトラム症の実像」を開催した。この公開講座は,発達支援に携わる方,保育士,教諭,保護者の方などを対象に,以下の内容で実施した。第1部の前半では,心理学の実験研究から明らかとなった自閉スペクトラム症の方たちの特徴を報告し,有効な支援や配慮に関する提言を行った。第1部の後半では,発達障害の診断と治療に長年携わっている小児神経科の医師から,最新の医療と支援に関する情報を伝えていただいた。第2部では,第1部の内容を踏まえ,発表者と参加者が,ナチュラルサポーターとしての具体的な支援の在り方について考えた。 また,2023年度は,ASDをはじめとする神経発達症群に対する基礎的な理解と研究知見に基づいた支援に関する講演及びワークショップを実施した。対象は,ナチュラルサポーターとしての働きが期待される人権擁護委員,児童委員,民生委員,児童指導員,幼稚園教諭,保育士,保護者等であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度に新型コロナウィルスが5類感染症に移行したものの,前年度までの感染拡大に伴い,実験実施が遅れたとともに,ナチュラルサポーター養成講座の実施回数も当初予定より少なく,やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに実施した研究成果から,自閉スペクトラム症の方たちの語用論的能力を把握し,有効と思われるコミュニケーション支援の方法を提示する。ナチュラルサポーターの方たちにそれらの方法を実践してもらい,効果の検証を行い,ナチュラルサポーターによる日常的な支援モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染状況により、学会及び研修会等がオンラインもしくはハイブリット方式の開催になり、旅費の支出がほぼなかったことが一つの理由である。また、ナチュラルサポーター養成講座等の開催も新型コロナ感染状況に左右されたため、開催件数が少なくなり、次年度使用額が生じた。この使用額に関しては、2024年度に学会への出張参加、及びナチュラルサポーター養成講座等に使用する。
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