研究課題/領域番号 |
21K02389
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
青木 聡 大正大学, 心理社会学部, 教授 (40327987)
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研究分担者 |
小田切 紀子 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (10316672)
野口 康彦 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (30434541)
草野 智洋 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (10585045)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 片親疎外 / 離婚後の親子交流 / 離婚と子ども |
研究実績の概要 |
「片親疎外(Parental Alienation)」とは,「両親の激しい対立による別居や離婚を経験した子どもが,正当な理由なく,一方の親(主に同居親)に強く味方し,もう一方の親との関係を拒絶する心理状態」と定義されている(Bernet, 2020)。 2023年度の研究では,(a)18歳~29歳,(b)未婚,(c)15歳までに父母の離婚を経験した,(d)月1回以上の親子交流を行っていた人412名/親子交流を行っていなかった人412名,計824名に対して,同居親による片親疎外行為が子どもに与える影響に関するオンライン質問票調査を行い,その結果を青木聡・野口康彦・小田切紀子・草野智洋(2024)『同居親による片親疎外行為が子どもに与える影響』大正大学カウンセリング研究所紀要,46,1-19にまとめた。 具体的には,片親疎外行為の研究でもっとも使用頻度が高い質問票であるBSQ(Baker Strategies Questionnaire;Baker & Chambers, 2011)の日本語版を作成した。分析の結果,日本語版BSQは,原版BSQの20項目ではなく,7項目の短縮版(Baker & Brassard, 2013)を採用することが適切と判断された。 日本語版BSQ-7は,父母の離婚を経験した未婚成人(18歳~29歳)が,父母離婚当時の生活における同居親の片親疎外行為を評定する質問票である(1因子構造)。日本語版BSQ-7のモデル適合度は非常に良好な水準で,内的整合性は十分に高く,妥当性も確認された。また,日本語版BSQ-7の「10点以上群」(片親疎外行為「高得点」群)は,「0点群」(片親疎外行為「なし」群)と比較して,ビッグファイブ(TIPI-J)の協調性得点が有意に低く,孤独感得点(TIL),精神的苦痛得点(K6),複雑性悲嘆得点(BGQ)が有意に高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の長期療養で,研究が大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後,子による親子交流の拒否を経験した別居親を対象に,親子交流が途絶していた期間の苦労や心情,交流再開を可能にしたと思われる具体策や心得について調査する予定である。また,調査協力者を確保できれば,父母の離婚後に別居親との交流を拒否していた未婚成人を対象に,親子交流に対する捉え方を調査する予定である。これらの調査により,子による親子交流の拒否で疎遠になった親子関係が改善される過程と,円滑な親子交流に至る促進要因および阻害要因を明らかにする。 また,これまでに行ったいくつかの調査によって得られた実証的知見をもとに,離婚後の親子交流の実施に苦労している父母や親子交流の支援者向けに,子による親子交流の拒否に対処するための情報提供の小冊子(支援ガイドブック)を作成することを予定している。このガイドブックは,離婚後の親子交流に関するガイダンスのテキストとして活用できる内容を中心にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査費用の残額として次年度使用額が生じた。そのまま次年度の調査に使用予定。
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