研究課題/領域番号 |
21K02394
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
水野 友有 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (60397586)
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研究分担者 |
東山 幸恵 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (40749066)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重度障害児(者) / 人間らしさ / 発達プロファイル / 全人的評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、重度障害児の定性的行動観察と身体的・生理的指標の連続モニタリングを行い、多軸・多面的に裏づけられた発達過程をプロファイルすることと、こころ(心理的)・からだ(身体的)・かかわり(社会的)における「人間らしさ」に着目し、重度障害児の発達を全人的に評価することを目的とした。 しかし、2021年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響により、計画していた重度障害児を対象としたデータ収集を実施することが難しい状況となった。よって、現場の状況把握を継続しながら、研究対象を発達期の重度障害児だけでなく重度障害者も含むこととし、今後のウィズコロナ研究環境を想定して研究計画を見直した。特に、研究協力者およびその家族・施設スタッフを対象とした聴き取り調査を実施し、適切な感染防止対策の上で観察可能な障害児・者関連施設のフィールド開拓に取り組んだ。その結果、新しい放課後デイサービス2カ所と生活介護施設2カ所をフィールドが決定し、本研究の目的が達成される方法を再考できた。 また、新たなデータ収集が難しい状況の中で、過去の記録や表現物(スタッフによる記録、動画や写真、重度障害児・者による造形物など)を考古学的な方法で整理および評価することから重度障害児・者の発達プロファイルを試みた。また、その結果を「アート」として一般公開(展示会開催)することにより、「障害とは何か」「人間らしさとは何か」を問う社会的実験を実施した。 上記の計画見直しと過去の蓄積物の再評価と並行して、重度障害児・者の文献研究によって重度障害児研究の動向を把握したで、重度障害児支援における課題を整理した。特に、障害児・発達心理学(研究代表者水野の専門分野)と栄養学(研究分担者東山の専門分野)の視点から考察し、重度障害児の生涯発達支援の在り方と重度障害児・者の生涯発達からみえる「人間らしさ」について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、病院や施設および協力者の自宅への訪問が制限され、計画していた重度障害児の定性的行動観察と身体的・生理的指標の連続モニタリングは実質実施不可能な状況だった。同時に、計画していた研究方法を抜本的に変更する必要があると考え、2021年度は研究協力者対象のオンラインによる聴き取り、単発での訪問による予備的観察を実施して研究計画を再考に取り組んだ。 その結果、当初の計画による進行はかなり遅れている。しかし、本来の研究目的を変更せずに現状でも可能な新たな方法を加えて試験的に実施したデータ収集や分析はで現場のスタッフの方や保護者にデータ撮りを依頼し、専用で共通に使用するデータ保存および解析用のPC購入が必要となった。病院や施設、対象児・者の自宅など準備していたフィールドに定期的に訪問すること自体が難しかった。実際には、遠隔による聴き取り調査や短時間での訪問で今後の研究計画を再考する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に整理した重度障害児・者研究の動向と課題をもとに、在宅医療や保育・教育現場の専門スタッフおよび保護者の協力を得てデータ収集を行う。得られたデータは、水野と東山がデータ分析(データ入力等は委託有)してまとめる。具体的な研究は、以下の4つとし、水野は発達学的視点、東山は栄養学的な視点から考察し、最終的には水野が統括する。主に、以下の3つの研究を進める。 1.「人間らしさ」と重度障害児に対する認識に関する調査研究:重障児の発達評価の視点として「人間 らしさ」に着目することから、他分野の研究者および大学生を含む研究者以外の成人を対象に「人間らしさの定義」を中心に重度障害児に対する印象や捉え方などについて、質問紙およびWebアンケート調査を実施する。 2.障児の定性的行動観察とモーションヒストリー機能による表情と動作の解析とプロファイル:表情と動作、および心拍指標をもとに、心理面における多軸的発 達評価をおこなう。 3.重障児の共事者を対象とした聴き取り調査:共に生活している人(保護者や支援者など)を対象にした重障児の発達の捉え方やその変化に関する聴き取りを行い、①・②の結果と比較し、また、①で明らかになった「人間らしさ」と照合した上で重障児の発達評価を再考する。以上の結果について総合的に考察する。 こうした一連の研究により、一人に複数かつ多領域・多職種の支援者が関わる重度障害児を、こころ(心理的)、からだ(身体的)、かかわり(社会的)の視点から発達評価とプロファイルし、重度障害児の「人間らしさ」に着目した全人的評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響により、計画していた重度障害児を対象としたデータ収集を実施することが難しい状況となった。よって、購入予定だった機器の再検討としたため、必要最低限の記録媒体の購入にとどまった。 また、旅費は学会および研究会はすべてオンラインだったが、新型コロナウィルス感染拡大がおちいた2022年3月に再考した計画を実施するためのフィールドワークにあてた。 現場の状況把握を継続しながら、研究対象を発達期の重度障害児だけでなく重度障害者も含むこととし、今後のウィズコロナ研究環境を想定して研究計画を見直した。特に、研究協力者およびその家族・施設スタッフを対象とした聴き取り調査を実施し、適切な感染防止対策の上で観察可能な障害児・者関連施設のフィールド開拓に取り組んだ。その結果、新しい放課後デイサービス2カ所と生活介護施設2カ所をフィールドが決定し、本研究の目的が達成される方法を再考できたため、次年度に測定機材等を購入予定である。
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