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2021 年度 実施状況報告書

保育者のもつ障害を包摂する保育をめぐる社会的位相

研究課題

研究課題/領域番号 21K02404
研究機関奈良県立大学

研究代表者

木下 裕美子  奈良県立大学, 地域創造学部, 研究員 (70434644)

研究分担者 佐々木 洋子  和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70647833)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード障害補償 / 保育 / ADHD / フランス / 日本
研究実績の概要

本研究課題の取組み初年度は、基本的な障害者雇用政策と制度の実態をまとめること、障害者のケアの権利に関する先行研究の収集、次年度以降の調査協力者や調査地の選定、共同研究を遂行する上での人的ネットワークの基盤を形成することを目的とした。
フランスの障害雇用政策に関し、支援の範囲と実態を把握するため障害補償(PCH)について最新情報の収集を行った。技術的支援や人的支援に関する調査報告書(Rapport Denormandie-Chevalier 2020, Rapport Leguay 2021)に続く法改正、精神、知的、認知障害を対象とした人的支援の修正内容を確認した。これらの政策動向を整理する過程で、ケアする権利と連なる営みである親の子育てに対し、2020年法制度化された「子育てPCH」の政策動向と仕組みを論文としてまとめた。
障害雇用においてケアと教育に携わる保育教諭(EJE)はその属する社会福祉分野の障害者雇用率は高くはないが、障害者職業参入基金運営管理機関(Agefiph)が公表する事例集からミクロ・クレシュ(小規模保育所)の事例を確認することができる(関連成果の一部は日本保育学会で報告)。さらに、分担者は、日本における定義や支援について論争のあるカテゴリー、ADHDをはじめとする発達障害に関する研究を進め、ADHDの医学的定義や支援をめぐる文献資料の収集と検討、関連学会での情報収集を行った(成果の一部は今年度論文化して公表)。
現地調査については、EJE養成教育機関関係者から調査協力者の紹介を受け、具体的な聞き取りについては次年度に調査を予定している。
研究ネットワーク基盤形成について、分担者とのオンライン研究会、フランスの障害学研究者との意見交換や障害学に関連する日仏対訳の検討を行った。また、調査先として障害予防支援介護団体の紹介を受け、訪問の調整を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本年度は科研研究初年度であり、研究環境整備とフランス障害者政策や活用実態を分析するための基本的な情報収集を中心としながらも現地訪問を予定していた。しかし、新型コロナ感染拡大の影響により、関係者・団体への訪問ができなかった。Zoom等の活用も考えたが、時差や初回の面談であるといった理由から調整が困難で、当事者への聞き取りは次年度に延期していることが遅れの原因である。一方、渡仏後の研究環境を整備をする中で、現地研究者とのミーティングを実施するきっかけを得ることができ、日仏翻訳や調査地の検討を行うことができた。

今後の研究の推進方策

保育教育の専門性について理論化や可視化が求められている現状を踏まえると、保育教育における規範やコード、それに基づく保育文化の理解は欠かせない。それを「適切な保育」もしくは、「適切なケア」と呼び、日本とフランスの調査を進める。
フランス調査担当者は、方法論と併せ、その「適切さ」を分析する関連文献調査を軸に、ケア領域への雇用参入の実態把握に向け、障害者雇用支援団体への訪問や参加観察、障害労働者への聞き取り調査の準備を進め、順次開始する。加えて、各保育教諭(EJE)養成学校、EJE全国連盟、全国保育企業団体、全国保育コープ、全国親参加型保育所協会への質問紙調査の実施を検討し、調査会社の選定を行いたい。その間、現地研究協力者とともに研究会を行い、共同調査計画の可能性を探る。そして、2023年度の研究活動に向け、分担研究者らとともに日本での調査研究を進める準備を行う。
日本をフィールドとする担当者は、発達障害への支援において、とりわけ早期発見・早期治療(対応)が求めらがちな傾向をふまえ、保育における適切な支援の重要性は無視できないと考える。したがって、次年度は、保育分野で求められる「適切なケア」についての調査研究を行う。保育分野で求められるケアの適切性は、翻って「保育者の適切性」をも規定しているのではないか。これらを検討することで、保育分野における障害者雇用および障害補償の可能性を検討する。
その他、2021年度に続き、ケアする権利、協働と自律/自立に関する理論研究や方法論、フランスの当事者研究、政策の実装化とその課題について文献研究を行う。
加えて、オンラインを活用し、当事者参加のもと研究会を行うとともに、現地研究者との意見交換を続けていく。

次年度使用額が生じた理由

本年度は科研費研究初年度であり、研究環境整備を行うとともに、フランス障害者政策や活用実態を分析するための基本的な情報収集を中心としながら現地訪問を予定していた。しかし、新型コロナ感染拡大の影響により、関係者・団体への訪問ができなかった。Zoom等の活用を考えたが、時差や初回の面談であるといった理由から当事者への聞き取りは次年度に延期したことが次年度使用額が生じた原因である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] ミクロ・クレッシュの起業家たち-誰の、何に向けた保育を目指しているのか-2021

    • 著者名/発表者名
      木下裕美子
    • 学会等名
      日本保育学会第74回大会
  • [図書] 「第8章 ADHDをめぐる論争――アメリカと日本の比較」『病と健康をめぐるせめぎあい』2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木洋子、(編著)佐藤純一、美馬達哉、中川輝彦、黒田浩一
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      978-4-623-09243-7

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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